それにしても、セイダカアワダチ草が食べられるなんて驚きだ。ほんの15分前まで、「どこにでもはびこる凶悪な外来種の雑草」というステレオタイプなイメージしか持っていなかった。しかし、舞子さんいわく、新芽は食べれば美味しいし、花は乾燥させれば入浴剤にもでき、なかなか優秀な野草のようだ。そう耳にすると、ああ、勝手に敵視してしまってごめんね、と謝りたくなる。
しかし、数十分も作業を続けていくと、すでに腰が痛くなってきた。
せっかく「畑」もあることだし、もっと効率的に植えて、パパッと収穫する方法はないのだろうか、などと根がグウタラな私は考えてしまうが、それは難しいのだそうだ。
「野菜ならばタネをまくといっせいに芽が出るけど、野草の世界ではそうはいきません。野草にとって、いっせいに芽が出るのはリスクなんです。次世代に子孫を残すために種や発芽を分散させるので、すぐ芽を出すタイプもあれば、タイムカプセルみたいに地中で過ごして、二年後くらいに出てくるものもあるんですよ」
そうかあ、だから、野草屋さんの日常はなかなか地道な作業の連続だ。
「昨日は近所の畑で在来タンポポの葉を摘んでいました。もうすぐ草刈りしちゃうよ!早く摘みにおいでと(畑の持ち主に)言われて、慌てて採りにいきました。間に合ってよかったです。タンポポって食べたことありますか? すごく美味しいんですよー」
小一時間ほど摘み続けると、洗面器はそれなりにいっぱいになってきた。
「だいぶ集まりましたね。いったん量を計ってみましょう」と、収穫した野草を秤にかけると、舞子さんは顔をほころばせた。
「よかった、これで出荷できます。じゃあ、次はよもぎを摘みましょう!」
収穫した野草は、一部は勝沼や青山のファーマーズマーケットなどで販売されるか、または東京などのフランス料理店などに出荷される。ヨーロッパでは、野草を取り入れた料理がブームになっていて、日本でも少しずつ需要が伸びているという。
「なかには星付きのレストランもあって、高くてなかなか食べにいけないのだけが残念ですね」
川内 有緒