鶴岡舞子さんは、野草を摘み、暮らしに取り入れるための提案を行う「野草屋」さん。
「摘み草の店 つちころび」(完全予約制)の運営や、野草料理を実践する講座などを実施している。活動の拠点は山梨県の甲州市。
いやあ、正直に告白すれば、草を摘むことで生計を立てられるなんてびっくり仰天だった。しかも、ハーブでも薬草でもない、純粋な「野草屋」さんは、日本全国見回してもかなり珍しいだろう。野草ってどんな味がするのだろう、それにどうやったら人は野草屋さんなどというものになれるのだろう、という好奇心で山梨に取材にやってきた。そして、最初に案内されたのが、この広大な畑だった。
「ここらへんにあるのが、セイタカアワダチソウです。摘んでみますか?」
カマを手にした舞子さんが、刈り方を実演してくれる。
さっそく私もカマを手に取り、一株ずつ刈ってみる。しかし、あまり強く引っ張るとブチっと茎の途中でちぎれてしまい、せっかくの野草が台無しになった。
「わ、ごめんなさい!」
「そう、けっこう繊細なんですよー」
さすが、舞子さんは手際よく収穫を続ける。
収穫する株は小さすぎても大きすぎてもダメ。ちょうどいい大きさのものを選ぶ必要があるのだそうだ。しかし、その選別が素人には難しい。だって、野草はまだ数センチ程度。ちょうどいい大きさと言われてもなあ……と戸惑ってしまう。
「野草は、ひとつずつ成長度合いが違うんです。お茶と一緒で、目利きでいいものを判別していきます。小さすぎると風味が弱いし、大きすぎるとお皿にのらないですから」
日差しが強くなり、全身が汗ばむなかで、私たちは黙々と収穫作業を続けた。
時折響くホーホケキョ! だけがBGMだ。
それにしても、私にとっては久しぶりに土に触る時間。日差しはきつかったけれど、気分はよかった。
摘んだセイタカアワダチソウは、お水にちょんちょんとつけ、形を揃えて並べていく。
こうしてみると、小さなほうれん草のように見える。
「ねー、こうしてみると、美味しそうでしょう」と舞子さんは愛おしそうに野草たちを眺めた。
川内 有緒