未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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20年の時を経て蘇った!

横浜芸者、復活への道

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.110 |25 March 2018
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#7お座敷遊びの敷居は高くない

お座敷遊び「金比羅船々」。なかなか富久丸さんには勝てそうにない。

 一番の盛り上がりを見せたのは、芸者と簡単なゲームで遊んだり、お酒を楽しんだりするお座敷遊びの時間。今回は『金比羅船々(こんぴらふねふね)』というふたりでできる遊びを富久丸さんが提案した。富久丸さんが手に取ったのはお座敷にあった袴(はかま)というもの。ビールの水滴を受けたり、お燗の熱さをしのぐ器だ。「お座敷遊び」というだけあって、実際にお座敷にあるもので遊ぶ。

 向かい合わせに座った二人が、歌に合わせて交互に袴の上に手を置く。片方が袴を持ち上げたときだけ、相手は手をグーにして置かなければならない、という簡単なルールだ。「一度やってみましょう」と促されるままにお客さんが富久丸さんと対戦すると、まあこれの盛り上がること! だんだんと早くなる歌のリズムに合わせながら、反射神経で袴を持ち上げたり置いたり、手をパーにしたりグーにしたり。見ているだけでもおもしろい。

三味線の音が小さい個室のなかで響き渡って心地良い。

 最後は富久丸さんが三味線で伴奏をしながら歌をうたい、お客さん同士で戦った。負けた方は罰杯と呼ばれる罰ゲームとしてお酒を飲み、三味線に合わせてポーズを取らなければいけない。お客さんも富久丸さんも、そして私までずっと笑っていた。

「やっぱりお客様とコミュニケーションを取るのが好きなんです。お酒を注いで、注がれてっていう文化は西洋にはない、日本独特のものですよね。お酌をしながらお話をして、芸を見て楽しんでもらうということが、私自身も楽しいから続けていられるんだと思います」

 芸者を呼ぶと聞くと、どうしても敷居が高いと思ってしまう。しかし実際、芸者2人を2時間呼ぶのにかかるお金はだいたい5万円程度。
20人集まる席に芸者を呼んだ場合、一人あたり2,500円でお座敷遊びが楽しめるのだから、そのハードルはそんなに高くない。富久丸さんは、横浜芸者としてこれからは料亭だけでなく、イベントや屋形船などでも芸を披露していきたいという。

「ただお酒を飲むだけではなくて、私達の芸を見ていただくことはもちろんのこと、お座敷遊びで楽しんでいただくこともできるので、ぜひ気軽に呼んでいただきたいですね」

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未知の細道 No.110

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。