未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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20年の時を経て蘇った!

横浜芸者、復活への道

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.110 |25 March 2018
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#4憧れから芸者の道へ

稽古ではゆっくりと振り付けを確認していく。

 稽古中だという『獅子は』という踊りを見せてもらった。富久丸さんと、昨年の春に芸者になったばかりだという新人の富久駒さんが、並んで金屏風の前に立つ。

 富久丸さんが歌詞を口ずさみながら、ゆっくりと一緒に踊っていく。「もう少し腰を落として」「手の向きはこっち」など、形を直しつつ身体で覚えていくという感じだ。和やかなムードは変わらないけれど、教える富久丸さんも、覚える富久駒さんも目は真剣そのもの。

「富久丸お姐さんに指導していただく以外に、他の日本舞踊の教室にも通い始めたんです。今まで踊りをやったことがなかったので、早く上手になりたくて」

お稽古中でも朗らかな雰囲気は変わらない。

 働きながら週に2日は踊りの稽古に通い、週に1日は横浜芸者の稽古に参加しているという富久駒さん。そんな熱心な彼女は、現在21歳。高校卒業後ホテルに就職し、そこで着物姿の人を見てから「着物が着られる仕事」というのが仕事探しの条件になったそうだ。ホテルや旅館などで働くなかで、横浜の田中家で富久丸さんに出会った。

「最初は着物が着たいっていう気持ちだけだったんですけど、仲居さんをやりながらお作法を習っていくうちに、日本人らしくてきれいだなと思うようになったんです。富久丸お姐さんの動きって、他の人と全然違うんですよ。指先まで揃っていて、ピシっとしていて……。そんなところに憧れて、『私にも踊りを教えてください』ってお願いしました」

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未知の細道 No.110

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。