未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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遊覧船の船頭唄を聴きながら

巴波川沿いに歩く栃木の蔵の街

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.105 |10 January 2018
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#6「巴波川悲話」を人形劇で

塚田家6代目の塚田幸市さん。

「蔵のある家は入り口が狭くて、奥行きが長い」

 昔は「間口税」という税金の計算方法だったため、間口と呼ばれる玄関はなるべく狭くする節税設計だった、と遊覧船で教えてもらった。塚田歴史伝説館もその例で、一度中に入るとかなり奥の方まで8つの蔵が続いていた。多くのテレビドラマでも使われているというのも納得の豪華さだ。

 塚田家はもともと江戸時代の後期から、木材回漕問屋を営み栄えた。その後、木材屋をやめて伝説館を始めたそうだ。6代目である塚田幸市さんに「ロボットだらけで驚きました」と伝えると、笑いながら教えてくれた。

「最初から、こんなふうにロボットだらけだったんじゃなくて、だんだんと増設していったんですよ。実は結構、ロボットのメンテナンスが大変なんですけどね」

 蔵の修繕も毎年行っているそうで、この状態を保っていくのだけでも大変だという。ハイテクロボットを維持するのにも、歴史あるものを残していくのにもお金や手間がかかる。

江戸時代からの歴史ある蔵。

 その後、全自動ロボット人形劇を観覧させてもらった。これは巴波川にかかる「幸来橋」にまつわる悲しい伝説を、約15分ほどの人形劇にしたものだ。

 そのこだわりは、想像以上! ある男女の悲しいストーリーがおもしろいのもあるが、全自動のロボットたちが生き生きとしていた。後半は、実際の水を使っていたり、語り手ロボットの動きも盛り上がりを見せ、最後まで目が話せなかった。

 終演後、一緒に見ていたご夫婦と舞台付近までロボットを見に行き「すごかったですねえ」と言い合った。

 江戸時代から続く歴史ある蔵のなかで、ハイテクロボットたちが歌ったり踊ったりする。そんなミスマッチな、どこか不思議な世界観を感じることができる場所だった。

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未知の細道 No.105

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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