未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
105

遊覧船の船頭唄を聴きながら

巴波川沿いに歩く栃木の蔵の街

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.105 |10 January 2018
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#5歴史ある蔵とロボットの共演

蔵沿いを遊覧船が進む光景は、横を散歩しているだけで気持ちいい。

 他のお客さんで賑わう遊覧船を眺めながら、川沿いをぶらぶら歩く。歩いていても、船頭唄がかすかに聞こえてくるのが、なんだか嬉しい。川のすぐ脇に建つ蔵は、「塚田歴史伝説館」として中が見学できるようになっていた。せっかくなら蔵の中を見てみたいと思っていたので中に入ろうとすると、看板の文言に目が止まる。

「ハイテクロボット蔵芝居」

 まさかここ「蔵の街」でハイテクロボットという言葉を目にするとは思わなかった。興味が湧いて、さっそく中へ。

 最初の部屋で早速、ハイテクロボットを見ることができた。三味線を弾きながら、この塚田歴史伝説館の説明をしてくれる語り部ロボットおばあちゃんだ。まばたきをしつつこちらを見てきたり、歌いながら目をそらしたりする。隣の猫もロボットで、おばあちゃんの歌に合わせて身体を揺すっている。

 後半、先に部屋にいたもうひとりのお客さんにふと目をやって仰天した。彼もまた、人形だった。座敷に腰掛けたおじいさんを、私は完全に人だと思っていた。外を歩いている観光客も年配の方が多かったのもある。部屋に入ったとき、会釈までした自分を思い出して苦笑いした。そのくらい、リアルだった。

 奥の蔵にはまだまだロボットたちがいるというので、ロボット2人を置いてひとつめの蔵を出た。

  • 三味線を弾き歌ってくれるハイテクロボットばあさん。
  • まさかの、こちらも人形だったおじいさん。
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未知の細道 No.105

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。