茨城県取手市
「ハーブ専門のすごい農家がある」との噂を聞いて、はるばるやってきた取手市貝塚のとある農場。そこは噂にたがわず、一流の料理人たちが使いたがる作物が青々と茂る、日本有数のハーブの農場だった。世界中を旅してきた破天荒なお百姓さんの仕事ぶりと、美味しいハーブと野菜のお話。
最寄りのICから常磐自動車道「谷田部IC」を下車
最寄りのICから常磐自動車道「谷田部IC」を下車
私には弟がいる。ぱっと見、ふつうのサラリーマンであるが、彼には、あるこだわりがある。
それは人一倍、食べ物にうるさい、ということ。特に生鮮食品、もっと言うと、野菜と果物に。
その理由は簡単で、つまり農業の流通の仕事をしているからだ。美味しく安全な農産物を流通させるために、日夜、各地の生産地に、たまには外国までも出かけて、生産者、消費者だけでなく資材、肥料と農業の全てに関わるさまざまな人たちと共に仕事をしている。
その弟がある日、とても立派なハーブをたくさん持ち帰ったことがあった。
その中には、近所のスーパーでは見かけたことがない、ふさふさとしたフェンネル、ディルなどがたくさんあった。
ヨーロッパの市場なんかだと普通にあるが、私はそれまで日本では、こういう立派なハーブの束を見た覚えがなかった。
大きいだけではなく、香りもすごくよい。どうしたのさ、これ? と聞くと、仕事相手の生産者から、もらってきたのだという。
ハーブ専門のすごい農家さんなんだよ、と弟はいった。珍しいたくさんの種類のハーブがびっしり育っていて、お姉ちゃんなんか料理が好きだから、畑を見たら興奮しちゃうかもね。
「そしてハーブだけではなくて、そこの農場は野菜もすごく美味しい。野菜とハーブを使った、手作りのピクルスなどの6次産業も手がけている。とにかく日本の中でも有数の生産者なんだ、霜多さんは」と弟は私に詳しく教えてくれたのであった。
農業の仕事をしている弟がそこまでいうのだから、凄い人なのだろうな、いつか会ってみたいな。その日からずっと私はそう思っていたのであった。
松本美枝子