早朝5時きっかりに目が覚めた、まだ日は昇らない。ねぼけまなこで身支度を整えて、いざ二日目のバードウォッチングへ。
10月半ばの島の朝は少し肌寒い。手袋は必須アイテムだ。
夜明けと同時に、もう一つのポイント「校庭」へと出かける。すでにたくさんのバードウォッチャーたちがカメラを構えていた。
今日は「ノゴマ」が来ているみたいだよ、とその中の一人が教えてくれた。ノゴマは夏はロシアで繁殖し、冬は東南アジアへと越冬する。日本では北海道あたりでしか見られない、なかなか珍しい鳥だ。教えてもらった方向にじっと目をこらすと、茂みの中からすぐ、ノゴマが出てきた! ノゴマは緑褐色の体に赤い喉元がとてもきれいな鳥である。そのトレードマークの赤い喉も、簗川さんが合わせてくれたスコープでしっかり確認することができた。
やった! やった! と小さな声で喜んでいると、すぐ隣で山上さんが「シギ? がいるみたい」と言い始めた。その方向をスコープで覗いてみると、ファインダー越しに、黒々とした大きな目の生き物が、どーんといて、びっくりした。茶色のまだら模様の羽毛で、体長は25センチ以上はあるだろうか……、細長いクチバシも存在感がある鳥だ。タシギという、これも飛島では飛来数が少ない鳥だということがわかった。この子はまだ幼鳥だという。じっと草むらの中に佇んでいるタシギは、生まれて初めての長旅に疲れているのかもしれなかった。
簗川さんが「山上さん、よく見つけましたね!」というと、山上さんは「たまたま覗いたら目に入っただけ!」と嬉しそうに笑った。
立て続けに珍しい鳥に出会えて大満足の私たちは、いったん宿に戻って朝ごはんを食べ、宿のおかみさんに作ってもらったお弁当を携えて、1時半出航の酒田行きの船に間に合うギリギリまで、バードウォッチングを続けることにした。
朝食後に荒崎という島の北西の海岸を歩いた後、昨日と同じ木立の中の道が続くルートへと戻ってきた私たちには、あるひとつの目標があった。
それは昨日、私と山上さんが確認できなかった「ムギマキ」を探しにいくことである。
ムギマキも本土ではなかなか見ることのできない珍しい鳥だ。ムギマキの動きはとても素早いので、昨日は簗川さんしか、その姿を確認することができなかったのだ。
さて昨日と同じ、ムギマキが好きなサンショウが茂る林の中へとたどり着いた。すぐにムギマキらしき鳥がやってきたが、あっという間に羽ばたいてしまい、またもや確認することができない。「また来ますよ」という簗川さんの言葉で、 草むらに腰を落ち着けてムギマキを待つことにした。お弁当を食べながら我慢強く観察を続けたが、なかなかムギマキは戻ってこない。
…… 20分、いや30分も経った頃だろうか。「あ、きましたよ!ほら」と簗川さんが指差した方向へと双眼鏡を合わせると、いた! オリーブ色の体に首から腹にかけてオレンジ色の羽毛がかわいらしい小鳥だった。二日かけてやっと出会えたムギマキは、一生懸命、木の実をついばんでいる。間近でその姿を見ることができて、感動もひとしおであった。
そんなこんなで船が出る時間が近づいてきた。
飛島の滞在、約27時間はあっという間だった。思った以上にバードウォッチングにハマってしまっている自分がいた。鳥の生態を知ることで、環境や自然を深く知ることにもつながる、そんなバードウォッチングの面白さがわかりかけてきた頃に、島を離れるのはとても惜しいような気がした。
それを簗川さんに伝えると、またぜひ鳥を見に飛島へ来てください、と笑って言われて、私は船に乗り込んだ。
次に来るときは「荒天」に恵まれるといいなあ、そしたら、もっとたくさん鳥が見られる!なんて思いながら。
未知の細道の旅に出かけよう!
飛島でバードウォッチングを堪能する旅
(2日間)
予算の目安 3万円~
おすすめの季節 秋 10月~11月 春 4月~5月
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松本美枝子