10月半ばの早朝。私は酒田港にいた。
船着場では思ったよりも多くの人が乗船手続きをしている。アウトドアレジャーを楽しむ格好をした人々の一群は、ほぼ2種類のグループに分けられる。ひとつは釣り道具に大きなクーラーボックスを抱えた釣り人たち。もうひとつは大きなカメラと双眼鏡を首から下げたバードウォッチャーたちである。行きの航路からバードウォッチングを楽しむのに違いない。私もさっそく双眼鏡を取り出して、甲板へ出た。
いよいよ9時半に出航、飛島まで約一時間半の航路である。港はぐんぐん遠ざかり、代わりに右手には青空の中にくっきりと美しい山が見えてくる。きっと鳥海山だろう。視界は良好、やや北西の風が吹いているが、概ね穏やかな秋晴れの日本海である。
そんな海の風景に見惚れていた私は、周りが熱心に双眼鏡を覗いているのに気がついた。海鳥たちの群れが海面スレスレに舞っている。
少し下調べしておいた、これがオオミズナギドリかな、などと思いながら私も眺めていると、年配の男性に「そろそろ飛島が近づいてきたよ」声をかけられた。「あなたもバードウォッチング?」と聞かれたので、「全くの初心者ですけど、そうです」と答えた。
するとそのおじいさんは「今、飛島にはすごく珍しい鳥が来ていて、僕らの間では今その話題で持ちきりなんだよ。僕も予定を早めてきたんだ。僕たちが島に着くまでに、その鳥が島に留まっているかどうか……」と、言ってその鳥の名を教えてくれた。ノドジロムシクイというヨーロッパの鳥らしい。
どうやら、いま船に乗っているバードウォッチャーたちはみんな、その珍鳥を見たくてこの船に乗っているのだ、ということも分かった。
そんなバードウォッチャーたちの静かな興奮を乗せて、船は飛島の勝浦港についたのであった。
未知の細道の旅に出かけよう!
飛島でバードウォッチングを堪能する旅
(2日間)
予算の目安 3万円~
おすすめの季節 秋 10月~11月 春 4月~5月
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松本美枝子