未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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生きるために生まれた郷土玩具 きびがら細工がつなぐ、祖父と孫の物語

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.248 |25 December 2023
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#7おじいちゃんのため、というより自分のため

左が青木さんと妻のタケ子さん、右が父方の祖父

喧嘩しつつも、「おしどり夫婦」という言葉がぴったりだった祖父母。二人三脚で箒をつくり続けてきた相方を失い、気丈だった青木さんはあっという間に小さくなって「もう職人を辞める」とまで言うようになった。

「私には介護の経験も知識もあったけれど、どうすればいいのか本当にわからなくて。でも、なにかしらしなきゃと思ったんです」

このままでは、おじいちゃんが寝たきりになってしまう。当時の早苗さんにできることは、1歳の息子を連れて祖父のもとに通い続けることだった。枕元に妻の写真を並べて寝てばかりいた青木さんも、孫とひ孫がやってくると起き上がるようにはなったという。

「息子に対して『これ、食うか?』みたいに話しかけたりして。聞けば嬉しそうに話をしてくれることもあって、その延長線上できびがら細工の手伝いをするようになったんです。その時は継ぐつもりなんてぜんぜんなくて、ただただ、おじいちゃんのためになにができるんだろう、という思いでした」

その思いの背景には、もうひとりのおじいちゃん、父方の祖父の存在があった。上京して介護の仕事をしていた20代前半、早苗さんは施設に入っていた祖父になにもしてあげられないままにお別れした後悔があったのだと教えてくれた。

「もちろんふたりは違う人だし、償いになるわけじゃないけれど。父方のおじいちゃんがいなくなって初めて、死んじゃうとなにもしてあげられないことを実感しました。だから、今度はできることは全部やろう、と。だからね、やっぱり自分のためなんですよね。おじいちゃんのためって言うと美談になっちゃうけど、自分が後悔したくなかったんです」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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