きびがら細工は、ほうききびを水につけ柔らかくしてから、糸でしっかりと編んでいく。動物の体の土台をつくったら、そこに大小さまざまなきびがらや、つまようじなどを使ってパーツを組み立ていく。来年の干支である辰年は、身体の部分をつくるよりも髭などの細かい作業に時間がかかるのだという。
後を継ぐと言ったものの、早苗さんは手取り足取り、きびがら細工のレシピを教えてもらったわけではない。基礎的な箒編みの技術を習いながら、祖父の頭のなかにある各動物の作り方を見よう見まねで学んだ。
「おじいちゃんは短気だったし、いちいち教えるのが面倒だったんだと思います。『ここができない』と言うと、『おお、そうか』って自分で仕上げちゃう。覚えたかったら見りゃいいだろう、みたいな感じでした」
結局、それぞれの動物の細かい作り方は教わっていないという。それでも早苗さんは、結果的にそれがよかったのだと話してくれた。
「そういう教え方だったからこそ、おじいちゃんの作品を見て構造を自分で考えることができるんですよね。『ウサギは何本編んで、ここで曲げて』という教え方をされてたら、きっとそれしか作れなくなっちゃってました。今でも、おじいちゃんの作品を見て『これはどうやってるんだろう』みたいな見方をしています。作り方は若干違うかもしれないけれど、形は近づけていける。もう今は、『これの作り方教えて』って聞けないですから」