未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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生きるために生まれた郷土玩具 きびがら細工がつなぐ、祖父と孫の物語

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.248 |25 December 2023
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#6すべてがガラリと変わった

「実は昔からそうで。中学2年生の時も、ふと『なんで学校に行かなきゃいけないんだろう』と不思議に思ってから、突然行かなくなったことがあったんです。なぜかは今でもわからないんだけど。はっきりと覚えてるのは、全校集会で同じような姿形の人が並んでいるのを見て『なんか気持ち悪いな』と思ったこと。でも、誰もその理由を教えてくれなかったんです。私はなにかが気になると止まっちゃうし、意味がわからないと進めないんだと思います」

“意味”を見いだせなくなった仕事を辞めて降り立った東京で、早苗さんは偶然、介護の仕事に出会う。利用者たちと真剣に向き合い、共に成長していく仕事に、早苗さんは「天職だ」と感じたという。

「介護の仕事が本当に大好きでした。だから、結婚と妊娠を機に鹿沼に戻ってきたけれど、産後はすぐにでも介護の仕事に戻るつもりだったんです。それまでの間、おじいちゃんとおばあちゃんの家に顔を出して、買い物や梱包などちょっとしたお手伝いをしているような感じでした」

そこで、状況が大きく変わる出来事があった。祖母のタケ子さんが急死したのだ。

「本当に突然でした。でも、もっと驚いたのは、おじいちゃんがまったく起きてこなくなっちゃったこと。それまでは自転車でどこまでも行けるくらい、すごく元気だったんです。おじいちゃんは私にとってすごく大きな存在で、いつも私が守ってもらう側だった。それがものすごく小さく、子どもみたいになっちゃって」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。