静岡県沼津市
大正時代から深海魚漁が盛んな静岡県沼津市戸田(へだ)。そこは日本一深い駿河湾のようなディープな魅力に溢れていた。
最寄りのICから【E1】東名高速道路「沼津IC」を下車
最寄りのICから【E1】東名高速道路「沼津IC」を下車
5月某日。私は戸田港に座って、駿河湾を眺めていた。髪も肌もまったくベタつかない爽やかな潮風が、汗ばんだ体を冷やしてくれる。30分ほど前に通った真城峠(さなぎとうげ)の山道に翻弄されヘロヘロになっていたのだが、すっかり気分が良くなった。
観光客は少なく、数隻の船と釣り人がちらほらいる程度で、人の声は聞こえてこない。サァーという静かな波の音と、カモメの鳴き声がクゥーと聞こえるだけの穏やかな海だった。遠くに見えるのは、ここから車で10分ほどの人気観光スポット、御浜岬(みはまみさき)だ。
この日は雲が多く見えなかったものの、本来なら正面に立派な富士山が見えるらしい。
私が訪れた戸田地区は沼津市の南部、西伊豆に位置する。日本一の深さを誇る駿河湾に面した小さな港町で、人口は3000人以下。戸田では1917年(大正6年)から続く深海魚漁が、人々の暮らしを支えてきた。静岡県沼津市は深海魚でまちおこしをしており、なかでも戸田観光協会は「深海魚の聖地」を自称している。
その「聖地」発、食用に向かない深海魚の詰め合わせを送るサービス「ヘンテコ深海魚便」が注目を集めていると知った私は、「誰が? 何に使うの?」と興味津々で戸田を訪れたのだった。