ゴールドコーストのシェアハウスに住みながら、日本食レストランやマッサージ店で4カ月働いた青山さん。
意を決して会社を辞め海外に来たのに、英語は上達しないしやりたいこともできない。「このままではダメだ」と焦りを感じ始めた時、日本人男性が経営する真珠の養殖場でのアルバイト募集を見つけた。
環境を変えたいと考えていた青山さんは「これだ!」と、クイーンズランド州の最北端にある金曜島に向かった。金曜島はトレス海峡に点在する島の一つで、真珠の養殖場があるだけの無人島だ。
真珠の養殖場には経営陣が2人。そのほかワーホリで来ている若者2~3人と共同生活を送る。青山さんたちアルバイトは、島を訪れるツアー客の対応や食事づくりのほか、野菜の栽培、馬や鶏、貝の世話など、なんでもこなした。
「島では、残飯や野菜の皮を馬や鶏に食べさせ、糞を肥料に野菜を育てるという循環する生活を送っていました。水は雨水を再利用して、電気は発電機を使った自家発電です。ツアー客に出す料理は自分たちで釣った大きなロウニンアジなどを捌いて、刺身や巻き寿司にして提供していました」
5カ月が経ち、島の生活にも慣れてきたころ予想外のことが起きた。アルバイト契約は残り1カ月あるはずなのに、経営者から突然「お前、もう帰れ」と言われたのだ。
なんで急に? 身に覚えのない青山さんは、悲しみよりも身勝手な相手の言動に腹を立てた。反論しても状況は変わらないことはわかっていたから、理由を聞くこともなく島を出ることを決意したという。
当時のことを、青山さんは次のように話す。
「当時は理由がわかりませんでしたが、帰れと言われた原因は私にあったのだと思います。島での生活を心から楽しめず、耐えていることが透けて見えたんじゃないかな。嫌なことばかりに目を向けてしまう自分の悪い癖に気付かされた出来事でしたね。でも今振り返ると、金曜島での生活は確実に私の人生のターニングポイントでした。どんな場所でも暮らせるし、なにが起こっても大したことじゃないと思えるようになったんです」