翌日、私は道の駅「くるら戸田」に向かった。戸田漁港から住宅街を抜け、車を10分ほど走らせる。
売店のほか足湯や温泉、深海ギャラリーなどが併設された同施設。観光客向けと思いきや、地元住民が集うコミュニティスペースや会議室もあり、楽しげな声が聞こえてくる。
ここで出迎えてくれたのは、しずおかの海PR大使の青山沙織さんだ。
2018年、地域おこし協力隊として兵庫県から戸田に移住した青山さん。水揚げされた食用の深海魚を自身で買い取り、当日中に一般家庭に直送する人気サービス「深海魚直送便」の生みの親だ。このサービスは、コロナ禍の漁業衰退を目の当たりにした青山さんのひらめきからスタートした。
「コロナ禍で飲食店が営業できなくなり、深海魚の卸し先がない漁師さんたちの苦しみを見ていました。高値で売れていた深海魚も二束三文にしかならなかった。町がどんどん活気を失っていきました」
自分になにかできることはないか。頭を悩ませた青山さんは「深海魚を買い取って一般家庭に直送すれば、漁師さんたちの収入になる」と思いついた。あるようでなかったサービスは瞬く間に注目を集め、多い時で1日に100件超の注文が入ったそうだ。
移住してくる前は、兵庫県にある航空機メーカーで働いていた青山さん。なぜ縁もゆかりもない土地で、深海魚に関わるようになったのだろうか?