未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日本一深い海は宝の山だった 深海魚の「聖地」を巡る

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.235 |12 June 2023
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#12まだまだ知られていない深海魚と戸田の魅力

おいしい深海魚コーナーには、「キンメダイ」などの見慣れた魚も。

閉館間際、筒井さんと別れ、深海魚展示エリアに戻った。なかには、中年の夫婦、娘さん、娘さんの友達という四人連れがいた。深海魚パネルを置いたブースで、楽しそうに撮影している。

「ご旅行ですか?」と話しかけると、「静岡市内在住だが、深海生物館には初めて訪れた」という。来館のきっかけは、娘さんの職場の先輩が激推ししたこと。沼津には、生きた深海魚を見られる沼津港深海水族館もあるのに、なぜこっちを勧めたのだろう?

「魚好きの先輩だったんですけど、ぜひ駿河湾深海生物館にって。すっごく素朴な施設で、深海魚と一緒に展示されている解説がおもしろいからって」

筒井さんも言っていたように、コアなファンが多いようだ。確かにこの施設、稀少な深海魚が展示されているだけではない。魚のレア度や、カップラーメンの容器に深海の水圧をかけた写真、おいしい深海魚料理など、ユニークな案内板がいたるところに設置されている。謎の多い深海や深海生物を、多方面から知ることができるのだ。

深海魚料理は食べましたか? と聞くと、「静岡に住んでいるから魚はよく食べるんですけど、深海魚は食べたことないんですよ」と渋い顔のお父さん。「タカアシガニとメギスの刺身がおいしかったですよ」と話すと、「へえ、そうなの?カニはおいしそうだけど......」とイマイチな反応。深海魚を食す前の私と同じく、ゲテモノ料理を想像しているのかもしれない。

「おいしい深海魚展示コーナー」にお連れすると、「キンメって深海魚なの!? 知らなかった! 俺、深海魚食べたことあったのか......」と心底驚いていた。

深海魚のおいしさも、医薬品の研究に使われるほどの貴重さも、そして戸田の歴史も、まだまだ知られていないのだ。味わって、体験して初めてわかる、駿河湾のように深い魅力が戸田の町にはある。

駿河湾深海生物館へと続く道には、水平線を望む絶景が広がる。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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