未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
211

福島県会津若松市

はるか縄文時代から伝わる漆器。艶やかで、滑らかで、温もりがあり、口当たりもよく、抗菌作用も強いときている 。考えてみると、漆器とはいったいなんぞや?「漆はロックだ!」と叫ぶ貝沼航さんと仲間たちが立ち上げた漆器「めぐる」の製作の現場を訪ね、漆が持つ謎とロマン、そして未来と課題を追いかけた。

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
一部写真提供= 漆とロック
未知の細道 No.211 |10 June 2022
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福島県会津若松市

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#1触って愛でて味わって……デザイン会議!

3人の女性が、漆器の木地(漆を塗る前の木の器)に頬擦りしたり、音を聞いたり、香りを嗅いだりしている。何分もかけてひとつの器と対話し、全身の感覚を使ってじっくりと確かめていく。

この日、私は会津の漆器ブランド「めぐる」の取材の真っ最中。ちょうど、あるお椀のデザインがリニューアルされることになり、複数のサンプルから新しいデザインを決定するという重要な場に立ち会っていた。

女性たちは視覚に障害があるので、その形状を目で確認することはできない。その代わり、繊細で鋭敏なその他の感覚を駆使しながら、器の使い勝手や雰囲気をとことん“見て”いく。

「ここの部分のカーブは前の方が良かったと思うんだけど、高台は新しい方が持ちやすい。もう一回触って比べてみていいですか」

そう語る女性の名前は川端美樹さん(みきティ)。彼女は「めぐる」の漆器のデザインに初期の頃から関わってきた。他のふたりも臆することなく感想をどんどん言う。

「新しい方はたくさん具が入りそうでやっぱりいいですね」

「でも吸口の感覚はどうだろう。やっぱりもう少しカーブがあった方が飲みやすそう」

サンプルは3人の間を何度もいったりきたり。30分ほどの賑やかな対話を経て、新しいデザインが最終決定した。こんなプロセスを経て「めぐる」の器は作られてきたことが伝わってきた。

というわけで、今回は漆を愛する人々の物語である。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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