福島県会津若松市
はるか縄文時代から伝わる漆器。艶やかで、滑らかで、温もりがあり、口当たりもよく、抗菌作用も強いときている 。考えてみると、漆器とはいったいなんぞや?「漆はロックだ!」と叫ぶ貝沼航さんと仲間たちが立ち上げた漆器「めぐる」の製作の現場を訪ね、漆が持つ謎とロマン、そして未来と課題を追いかけた。
最寄りのICから【E49】磐越自動車道「会津若松IC」を下車
最寄りのICから【E49】磐越自動車道「会津若松IC」を下車
3人の女性が、漆器の木地(漆を塗る前の木の器)に頬擦りしたり、音を聞いたり、香りを嗅いだりしている。何分もかけてひとつの器と対話し、全身の感覚を使ってじっくりと確かめていく。
この日、私は会津の漆器ブランド「めぐる」の取材の真っ最中。ちょうど、あるお椀のデザインがリニューアルされることになり、複数のサンプルから新しいデザインを決定するという重要な場に立ち会っていた。
女性たちは視覚に障害があるので、その形状を目で確認することはできない。その代わり、繊細で鋭敏なその他の感覚を駆使しながら、器の使い勝手や雰囲気をとことん“見て”いく。
「ここの部分のカーブは前の方が良かったと思うんだけど、高台は新しい方が持ちやすい。もう一回触って比べてみていいですか」
そう語る女性の名前は川端美樹さん(みきティ)。彼女は「めぐる」の漆器のデザインに初期の頃から関わってきた。他のふたりも臆することなく感想をどんどん言う。
「新しい方はたくさん具が入りそうでやっぱりいいですね」
「でも吸口の感覚はどうだろう。やっぱりもう少しカーブがあった方が飲みやすそう」
サンプルは3人の間を何度もいったりきたり。30分ほどの賑やかな対話を経て、新しいデザインが最終決定した。こんなプロセスを経て「めぐる」の器は作られてきたことが伝わってきた。
というわけで、今回は漆を愛する人々の物語である。