山形県最上郡
山形の山奥で、30年にわたりメープルシロップを作る人がいる。そんな面白い話を耳にして、最上郡へ。1年のある時期にだけ、甘い樹液を採取できる楓の木。その背後には山に生きる人々の物語があった。
最寄りのICから【E13】東北中央自動車道「雄勝こまちIC」を下車
最寄りのICから【E13】東北中央自動車道「雄勝こまちIC」を下車
山形新幹線の終着駅がある新庄から国道13号線を北へ向かうと、田園地帯の奥に連なる、分厚い雪化粧を施した奥羽山脈が見えた。晴れ渡った青空にうねりながら突き出す、白く輝く大地のしわ。自然の生み出す造形の、息を呑むほどの神々しさ。
やや険しい山道を抜け峠に出ると視界がパッと開け、実に絵画的な盆地が目に入った。緩やかに蛇行する川に沿って広がる雪に覆われた田畑、素朴な寺社と小さな集落。盆地のあちこちにハーシーのキスチョコレートような形をした小さな山がいくつも並んでいる。ニッポンの原風景を保存したような、チャーミングな山里。私は山形県の北に位置し、秋田県とも接する金山町にやって来た。
19世紀のイギリスの探検家であり旅行作家であるイザベラ・バードは、「日本奥地紀行」として発表された旅路で金山町に滞在している。1878年のこと。彼女もやはり、この印象的な盆地について「ピラミッド型の山の麓に抱かれた、ロマンチックな雰囲気の場所」と表現している。