未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
200

金沢で出会った、ハレの日の伝統発酵食 泉鏡花が芥川龍之介に贈ったお漬物「かぶらずし」を作りに

文= 吉川愛歩
写真= 吉川愛歩
未知の細道 No.200 |27 December 2021
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#8時間が育てるかぶらずし

持ち帰った夜、重石をするのにちょっと中を覗いてみると、昼間入れたばかりの漬け床がもう水っぽくとろとろになりはじめていた。発酵が進んでいるからなのか、かぶの水分なのか……、とにかく日々観察。

そんなときに限って(ではないけど)東京は本当に暖かいのだ。ダウンジャケットでちょうどよかった金沢とは違い、今年はどういうわけかまだ薄っぺらいコートで充分の暖かさ。毎日覗きたい気持ちを抑えて3日待ち、ちょっとひとつ切ってみた。

すると、かぶとブリと漬け床の味がバラバラで、ほんのりかぶに辛みを感じる。これはまだだなと思い、5日目に開けた。

とろんとろんの漬け床の中にかぶらずし発見! という瞬間が楽しい。

できあがったかどうかという判断は、見た目にはなかなか難しいのだけれど、食べればわかる。かぶの芯まで漬け床がしっかりと染み込み、塩気のあるブリは生ハムのように透き通った味をしていて、何より食べたときに全部がまとまっている。漬け床のうまみも増している気がした。

ごはんにも合うし、もちろんお酒にも合うけれど、わたしはお茶請けにするのが好き。
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