未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
200

金沢で出会った、ハレの日の伝統発酵食 泉鏡花が芥川龍之介に贈ったお漬物「かぶらずし」を作りに

文= 吉川愛歩
写真= 吉川愛歩
未知の細道 No.200 |27 December 2021
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#5金沢の思い出と一緒に味わう

「やっぱり、子どものころからかぶらずしが好きだったんですか?」

そう尋ねると、四十万谷さんはにっこりと笑って、「そんなことないんですよ」と言う。

「小さいころは、ぜんぜんです。身近にはあったけど、あんまり得意ではありませんでした。それが大人になると、急にこのおいしさに気づくんです。四十萬谷本舗では一日におよそ1.2トンのかぶを塩漬けして、ワンシーズンで20数万枚作るのですが、改めて考えてみると、そんなにもみなさんに愛されているってすごいなあって思います」

「一度食べたら忘れられない味でした」

「そうだったんですね! かぶらずしを買ってくださる方って、金沢や石川県とご縁のある方が多いと思うんです。以前旅行に来ていただいたとか、おばあちゃんが好きだった、とか。そういう思い出とともにかぶらずしを買っていただいている、ということは大切にしたいです」

かぶらずし作りの前には、四十万谷さんが発酵や麹について教えてくださる。

「味の記憶って心に残りますもんね」

しみじみ言うと、四十万谷さんは会社員だったころの話を教えてくれた。

「そうなんですよね。家業を継ぐ前は、食品メーカーで国内外の人事の仕事をしていたので、国も文化も違う人たちと一緒に働くことがあったんです。そんな中でも、みんなで食事をともにすると絆が生まれていったりするもので。ほかにも、仕事や私生活がうまくいかなかったときに先輩が作ってくれたごはんとか、思い出に残る、忘れられない味ってありますよね。そういう食べ物で感じられるしあわせを大事にしていきたいなって思っています」

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