押入れがある部屋の奥は、廊下になっている。その右手は板の壁になっていて、ぱっと見は行き止まりだ。そこで佐藤さんが、ニヤリとする。
「これは扉なんです。開けられますか?」
え? 押しても引いても、ガタガタいうだけで開く気配がない。戸惑っていたら、佐藤さんが壁の補強のように何本か横に貼られている棒の一本を掴み、スッと動かした。すると壁だと思っていた板が扉のように開き、その先に小さなスペースがある。
あ、ここに隠れるのかと思ったら、違った。よく見ると、そのスペースのさらに横に極細の空間がある。その空間は、隠し天袋がある部屋の壁と家の外壁の間に作られている。
「ここも忍者が隠れるところです。かなり奥行きがあるので、3人ぐらいは入ることができたと思います」
想像してほしい。壁が隠し扉になっていて、その先にある極細の空間に目をギラギラさせた忍者が3人も隠れていることを。怖い! 佐藤さんにちょっと隠れてみてくださいとお願いしたら、なにも言わず、その空間にスッと入り込み、顔だけだしてくれた。笑顔はない。その瞬間、忍者が佐藤さんに憑依したように見えた。