未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
198

弘前藩の忍者集団「早道之者」に翻弄されるの巻 ドキッ!仕掛けだらけのリアル忍者屋敷

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.198 |25 November 2021
この記事をはじめから読む

#7「うぐいす張り」と隠し天袋

足を乗せるとギギギギッと板がきしむ「うぐいす張り」。

畳張りの居間に戻る。佐藤さんが、一部だけ板張りになっている場所を指して、「ここに乗ってください」という。板の上に足を乗せると、ギギギギッと板がきしむようなけっこう大きな音が響いた。僕の体重のせいではない。続いて、佐藤さんが足を乗せても同じような音がした。これは、侵入者を知られるように作られた仕掛けで、「うぐいす張り」という。

うぐいす張りについて、面白い記事を見つけた。2017年12月27日に朝日新聞デジタルに掲載された記事【城や寺の「うぐいす張り」、実は「忍び返し」ではない?】によると、もともと4つの建物をつなぐ約550メートルの廊下がうぐいす張りとされた京都の知恩院では、2011年に修理を終えてから1つの建物で音が鳴らなくなった。老朽化で床板を固定する金具が緩んで音がなっていたことがわかったそうだ。

忍者屋敷はどうだろう。居間に入る人が最初の一歩を踏み出す位置だけが板張りになっている。侵入するとしたら夜の暗い時間帯だろうから、気づかずに板を踏んでしまう可能性が高い。それに、足を乗せた時に鳴る音が、でかい。これはやはり、人為的に作られた「うぐいす張り」だと想像する。

懐中電灯の光の先に、押入れの上に登るためのわずかな隙間がある。

忍者屋敷のツアーはまだまだ続く。居間の奥の部屋にある、なんの変哲もない押し入れ。佐藤さんが「ここを見てください」と懐中電灯で上部に貼られた板を照らすと、痩せた人間がひとり通れるほどの隙間が空いていた。外からは見えない天袋があって、板の隙間を通って隠れられるようになっているのだ!

この天袋は、僕の体格では絶対に入ることができない。忍者ってよっぽど小柄だったんだなと思って調べてみたら、江戸時代の日本人男性の平均身長は160センチに満たなかったようだ。忍者は身体を極限まで鍛えているだろうから、体重も軽いはず。だから狭くて脆そうな隠し天袋にも身を潜めることができたのだろう。

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。