未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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北海道上川郡東川町

魅力あるまちづくりで、多くの移住者を引き寄せている北海道の東川町。この町を舞台に、ふたりの女性が始めた「人生の学校」。17.5歳以上なら年齢も国籍も問わず入学できるデンマークの全寮制学校・フォルケホイスコーレをモデルにしているという。なぜ東川町でデンマークの学校?そこではなにが学べるの?

文= 川内イオ
写真= 川内イオ・コンパス
未知の細道 No.192 |25 August 2021
  • 名人
  • 伝説
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  • 穴場
北海道上川郡東川町

最寄りのICから【E5】道央自動車道「旭川鷹栖IC」を下車

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#1北海道で人口増加率トップの町へ

北海道第2の都市、旭川駅から車でだいたい30分。旭川空港から、車で15分。近年、「写真の町」として全国的に知られる北海道上川郡東川町を訪ねた僕は、意外なほどのアクセスの良さに驚き、コンパクトながらもどこか開放的な町の景色に心惹かれた。

中心地は、この町に暮らす人々の生活や町の営みを程よく感じられる落ち着いた雰囲気で、高いビルや巨大な商業施設がないから空が広い。中心地から少し車を走らせると、人の手によってしっかりと整えられた美しい田畑と、緑豊かな山々が目に入る。なんというか、深呼吸して、うーん! と伸びをしたくなるような、町と自然のバランスが心地いい町だ。

心がスッと軽くなるような東川町の風景(写真提供:コンパス)

1950年に1万人を超えていた東川町の人口は、1993年になると6973人にまで減少した。そこから2019年には8380人にまで回復し、総務省が今年1月1日に発表した人口動態では、人口増加率で北海道トップに立った。

「東川町」を検索すると、人口増加に関する記事がたくさん見つかる。そのなかには2002年から始まった充実した子育て支援や景観を守る取り組み、2009年からスタートした外国人留学生の積極的な受け入れ、1985年に宣言した写真を軸としたまちづくりなど多くの要素が挙げられている。

文字で読むと「ふーん、そうか」程度の感想しかなかったけど、東川町に足を踏み入れて、なるほど! と納得できた。よそからどう見られるのかを意識したブランディングではなく、町の将来と住民の住みよさを意識した長年の取り組みによって、たくさんの人が移住する町に変化してきたのだ。

この気持ちのいい町に引き寄せられたふたりの女性が、2020年4月、この町を舞台にした学校を開いた。その名も「人生の学校」。スキルアップや資格取得が目的ではなく、東川町で豊かな時間を過ごすことで人生を見つめ直したり、新たな気付きを得るための学校だ。

これはもうなんだかすごく気になる! ということで取材を申し込んだ僕は、待ち合わせ場所に指定された町の複合交流施設「せんとぴゅあⅡ」を訪ねて、その施設自体に心を鷲づかみされた。

待ち合わせをした「せんとぴゅあⅡ」。

旧東川小学校の校庭には、ゴロゴロしたりピクニックしたりするのにぴったりの芝生!(取材の日が雨じゃなかったら、絶対に寝転んでた)。その広々とした芝生の庭に面して大きな開口部をとったセンスのいい建物のなかには、5万冊の書籍を収蔵する図書スペース「ほんの森」があって、たくさんの老若男女が本を開いたり、勉強をしたりしている。

その隣りのスペースでは、家具デザイナーで椅子研究家、東川町芸術文化コーディネーターの織田憲嗣さんが収集した世界的な名作椅子が「織田コレクション」として展示されていて、思わず見入ってしまう。この素敵な施設にある一室で、人生の学校を開いた安井早紀さんと遠又香さんに話を聞いた。

人生の学校を立ち上げた安井早紀さん(右)と遠又香さん(左)
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。