違う学部、違うキャンパスで学んでいたふたりが出会ったのは、2008年、大学2年生の時。慶應大学150周年記念事業として、学部生、院生、社会人がともに学ぶ福沢諭吉記念文明塾というプログラムが開催され、そこで知り合った。
とはいえ、その時はそれぞれの活動が忙しかったこともあり、お互いに「面白い子がいるな」と認識しながらも、それほど距離は近くなかった。それは社会人になってからも変わらず、年に一度か二度、食事をする程度の関係だったという。
2017年9月、ふたりが一緒にデンマークへ旅行に行くことになったのも、単なる偶然だった。大学卒業後、リクルートに入社した安井さんは当時、人事部で働いていた。遠又さんは、新卒で入ったベネッセから転職して、外資系コンサルティングファームでコンサルタントをしていた。
多忙なふたりが久しぶりに会って食事をした時、たまたまふたりとも9月に長い休みを取ることがわかり、「一緒に旅行しよう」という話になった。目的地を決める時、「久しぶりに会いすぎて、お互いの共通のテーマが教育しかなくて」(遠又さん)、海外の面白そうな学校を訪問してみたいよね、と盛り上がった。その時、アメリカやインドネシア、そしてデンマークの学校が候補に挙がり、それぞれの知人が行ったことがあるということで、デンマークに行くことになった。
訪ねたのは、デンマーク発祥の「森の幼稚園」と「フォルケホイスコーレ」。ふたりは「フォルケホイスコーレ」で人生を変える衝撃を受けた。フォルケが国民のための、ホイスコーレがハイスクールで、19世紀のデンマークの詩人、聖職者、哲学者、教育者として知られるグロントヴィが創設した。17.5歳以上の成人であれば、国籍や障害の有無も関係なく誰でも入学できる全寮制の学校で、テストはなく、成績もつけられない。