未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
177

東京から2時間で「日本のブラジル」へ 群馬一小さな町は、サンバのリズム

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.177 |12 January 2021
この記事をはじめから読む

#7モッチモチのチーズパン

トミでは、オーナーの松山久美穂さんがいきなりの訪問を素敵な笑顔で迎えてくれた。このお店は、松山さんと日系ブラジル人の旦那さん「トミハル」さんがふたりで開いた。最初の頃は外国人のお客さんしか来なくて、松山さんは日本にいながらにしてホームシックになったと笑う。

でも、トミさんはオープンな人柄でいろんな人の相談に乗ったり手助けをしたりしていたから、どんどん顔が広くなり、パンの評判も広まって、そのうちにお店がテレビで取り上げられるようになった。それから、日本人のお客さんが来るようになったそう。今では、トミを検索すると「大泉町の人気店」「大泉町の名店」などなど、訪ねた人たちの口コミがたくさん投稿されている。

松山さんのおすすめは、キャッサバの粉で作るチーズパン。これも絶品!

残念ながら、トミさんは50歳で亡くなってしまい、今は松山さんと息子さんが、スタッフと一緒にお店を切り盛りしている。話をしていたら、松山さんが「これ、食べていって!」とお店の人気商品、チーズパンを食べさせてくれた。

このチーズパン、ブラジルではおなじみのレシピで作られていて、原料はキャッサバイモ(タピオカの原料!)と水、塩、チーズだけ。それはもうびっくりするほどモッチモチで、お腹が減っていたら、何個も食べてしまいそうだ。

「せっかくだから、ブラジルのコーヒーも飲んでってね!」と食後のコーヒーまでごちそうになってしまい、その温かいおもてなしで、また僕のブラジル好きが深まっていく。これはもう再訪して、メガトミバーガーにチャレンジするしかない。

実は、「Ci Brasil」とタカラ、トミは徒歩30秒圏内にある。ごくごく近い距離で3軒まわっただけで、僕の心はもうホット&サンバになっていた。

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。