未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
177

東京から2時間で「日本のブラジル」へ 群馬一小さな町は、サンバのリズム

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.177 |12 January 2021
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#5控えめに言って最高のランチ

食堂とスーパーが併設されたブラジル系スーパー「Ci Brasil」。

まずはランチにしようということで、最初に向かったのは、ブラジル系スーパー「Ci Brasil」。「シーブラジル」と読む。町なかに何軒もあるブラジル料理レストランではなく、スーパーでランチ? と不思議に思ったのだけど、このスーパーのなかにある食堂が安くて美味しいと地元のブラジル人たちの間で評判なのだと聞いて、納得した。こういうローカール情報は、よそ者ひとりだと得られない。やっぱり、富樫さんに案内を頼んでよかった!

  • ほとんどブラジルのスーパーと変わらない店内。
  • 商品の表示もポルトガル語。

スーパーに入ってすぐに、僕はときめいた。食堂のメニューを含めてほとんどがポルトガル語で表示されていて、食堂で働いているおじさんとおばさん、お客さんも全員ブラジル人。この雰囲気は、僕がブラジルで通っていた食堂とまったく一緒じゃないか!

ブラジルで食べたフェイジョアーダに勝るとも劣らない味!

食堂では、大泉町観光協会の事務局長、中山正樹さんが僕らを待っていてくれて、一緒にランチをした。僕はブラジル料理のソウルフード、肉と豆を煮込んだフェイジョアーダと、富樫さんが「ブラジル人が大好きで、よく食べている」というイチボ(牛のお尻の下のほうの肉)のステーキを注文。

ステーキもおいしかったけど、格別だったのはフェイジョアーダ。僕は、ブラジル旅行中にフェイジョアーダが大好きになって何度も食べた。この食堂のフェイジョアーダはまさにその時に惚れ込んだブラジルの味そのもので、控えめに言って最高だった。サンバの曲が流れてきたら、間違いなく踊っていただろう(マツケンサンバじゃないよ)。

せっせとフェイジョアーダを平らげながら事務局長の中山さんに話を聞くと、大泉町の出身ではなく、単なるブラジル好きだという。

僕と同じく、過去に2回、ブラジルを旅してすっかり惚れ込み、日本でもブラジルを身近に感じていたくて、最初は大泉町に遊びに来たそう。日本のほかの地域にあるブラジルタウンにも足を運んだことがある中山さんは、すぐに「大泉町が一番!」と気に入って、通い始めた。その頃は、いずれブラジルで働こうと、地元の大阪で日本語教師の仕事をしていたが、大泉町に顔見知りが増え、そのうちのひとりから観光協会の仕事を紹介されて、すぐに移住を決めたそう。

ブラジルとブラジル人が大好きで、日本最大のブラジルタウンの観光協会の事務局長をしてるって、なんてサンバな人生だろうか!

ブラジルのカーニバルの衣装。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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