夕方、富樫さんがフットサルコートに連れて行ってくれた。「ブラジルフットサルセンター」という名前のそこは、ブラジルでフットサルのプロ選手だった大城エジバルドさんが立ち上げた。まだ日本でフットサルがほとんど知られていない時から大泉町のブラジル人が集ってチームを作り、数々の大会でタイトルを獲得してきた、知る人ぞ知る名門フットサルクラブだ。
僕が訪ねたのは、子どもたちがトレーニングを始めたタイミングだった。ブラジル人の若者が、流ちょうな日本語で子どもたちに指示を出している。このチームには、日本人、ブラジル人、ボリビア人、ペルー人、アルゼンチン人がいるそう。サッカーがうまくなりそうな環境だ。
そうそう、日系ブラジル人とともに30年の時を歩んできた大泉町は「外国人が住みやすい町」として広く知られるようになり、現在、外国人が約8000人住んでいる。大泉町の人口の約19%だから、だいたい5人に1人が外国人ということになる。ペルー人が1000人以上、ネパール人が400人以上、ベトナム人が300人以上いて、ほかにもフィリピン人、ボリビア人、中国人などなど、なんと45カ国の国籍を持つ人たちが暮らしている。
町の面積と外国人の比率や多様性を考えると、大泉町はもしかしたら日本でも屈指のインターナショナルタウンかもしれない。そうなったのはきっと、日本人とブラジル人がぶつかり合いながらも歩み寄ってきた歴史があったからだ。駅前の昔ながらの八百屋さんが、大きなひらがなとカタカナ、ポルトガル語で商品名を書いているのをみて、そう思った。
大泉町観光協会では、毎月一回、町なかのいずみ緑道の「花の広場」で、「活きな世界のグルメ横丁」というイベントを開催している。ここでは日本、ブラジル、ペルー、ネパール、トルコ、イラン、ロシアなど大泉町に住む外国人が、それぞれの国の料理を販売しながら、交流するのだ。サンバのステージや、ライブパフォーマンスもある。
昨年は開催できなかったというから、今年はぜひ再開してほしい。今回、1日かけて「日本のブラジル」を堪能したから、今度は45カ国の人が住む町で本当の異国情緒を体験しに来よう。
※この取材は緊急事態宣言前に行われたものです。