未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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東京から2時間で「日本のブラジル」へ 群馬一小さな町は、サンバのリズム

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.177 |12 January 2021
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#2大泉町がブラジルタウンになった理由

え? ブラジルタウンってなに? なんで大泉町? という方もいるだろうから、簡単にその歴史を説明しよう。群馬県で一番小さな町、大泉町は、戦前に飛行機の工場があったこともあり、戦後も富士重工業(現スバル)や三洋電機(現パナソニック)などの工場が集まった。

しばらくすると日本は高度成長期に入り、日本中で製造業の人手不足が深刻になる。その影響で、自分の国より稼げる日本に働きにきた不法就労の外国人が増えてしまい、1990年に入国管理法の大幅改正が行われた。

この法律によって不法就労の取り締まりが厳しくなったんだけど、それだけだと製造業の現場を担う人がいなくなってしまう。そこで、日本人の父母を持ち、外国で生まれ育った日系2世、日系2世の父母を持つ日系3世とその家族に対しては、日本で働きやすくなるルールができた。

日本は1908年からブラジルへの移民を始めていて、現在、ブラジルに住む日系人は約200万人。1990年前後、ブラジルは経済が低迷し、政治も混乱していたから、入国管理法の改正を機に、自分のルーツがある日本で働きたいという人が一気に増えた。

その一部が向かったのが、家電製品や食品加工、自動車部品工場など100軒以上の工場がある大泉町だった。当時、人手不足に悩んでいた大泉町では、働き手を集めるために70社以上が資金を出し合って独自の組織を作り、ブラジルで大きく募集をかけたのだ。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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