未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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東京から2時間で「日本のブラジル」へ 群馬一小さな町は、サンバのリズム

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.177 |12 January 2021
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#10「大丈夫」と言いながら泣いた日々

祖父を亡くし、日本にいる理由がなくなったマリオさんは、一度、ブラジルに帰国した。ところが、かつての同級生たちは就職していたり、結婚していたり、マリオさんとまったく違う生活を送っていて、浦島太郎のような気分になった。それならまた日本で働こうと、再び大泉町に戻ってきたのだ。

大泉町では、住宅メーカーや電機メーカーの工場で働いた後、人材派遣会社に移った。そこで5年働いてからブラジルの新聞社、ブラジル銀行と渡り歩き、2003年に起業。大泉町でフリーペーパーを発行しながら、別会社も立ち上げて、ブラジル関連のイベント企画を始めた。イベントを通して、ブラジルと日本の架け橋になろうと考えてのことだった。

リーマンショックでフリーペーパーの会社は畳んだが、イベントの企画だけは続けつつ、再び人材派遣会社で勤務。2年前に転職し、現在は不動産会社で住宅の販売をしながら、日系ブラジル人が住宅を購入する際のサポートをしている。

製造業の工員をしている人がほとんどの日系ブラジル人社会で、幕田さんは非常に稀な存在だ。顔が広く、日本人の友人も多い。プライベートでもたくさんの人の相談に乗っている。

すっかり日本の生活に溶け込んでいる幕田さんだが、日本で働き始めた頃は差別に苦しんだ。ブラジルに住んでいた18年間、両親は日本人だったから、家では日本語を話し、日本食を食べた。自分は日本人だと思っていたのに、日本の職場では「ガイジンさん」と呼ばれるのだ。当時の話を聞くと、つらそうな表情を見せた。

「あれは本当に悔しかったね。日本人は、日本の移民の歴史を知らないでしょう。日本には食べ物もなく、仕事もなかったから移民したんです。その子どもたちが日本に帰ってきたら、ガイジンと言われるのはショックですよ。両親に電話した時、大丈夫? なにか困ってることはない? と聞かれて、いつも大丈夫って言ってたけどね、けっこう泣きました」

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

東京から2時間「日本のブラジル」ツアー

最寄りのICから、【E50】北関東自動車道「太田桐生IC」を下車
1日目
ブラブラと町歩きをしながら、ブラジリアンフードを堪能する。事前に、大泉町観光協会に連絡して町歩きプランを予約するのがおススメ!町に2軒あるビジネスホテルに宿泊。
大泉町観光協会
2日目
日本のブラジルを満喫した翌日は、「活きな世界のグルメ横丁」(要日程確認)へ。インターナショナル感あふれるイベントで、すっかり旅気分。
活きな世界のグルメ横丁 - 大泉町観光協会

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。