未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
124

福島県いわき市

10月15日、福島県いわき市。
キノコの日、僕は80歳のご夫婦とともに山に入った。
森の宝石とキノコの王様を求めて。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.124 |25 October 2018
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岡山県美咲町

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#1いざ、宝探しへ

 昨年10月6日と11月4日、福島のいわきの山中で「森の宝石」が発見された。世界三大珍味のひとつで高級食材のトリュフだ。これが専門家に持ち込まれ、鑑定によって日本固有のトリュフ「ホンセイヨウショウロ」と判明したのが、今年の7月。福島初、全国で7例目の発見として大きく報じられた。

トリュフ発見の報とともに福島のメディアに掲載された冨田武子さん。(記事の切り抜きは冨田さんより提供)

 その報道をたまたま目にして、僕は驚いた。トリュフといえばフランスやイタリアなどヨーロッパが主な産地というイメージがあったからだ。日本でも自生しているということを知った瞬間、頭のなかに浮かんだ言葉、それはシンプル。

 ……僕も採りたい。採った人に話を聞きたい。

 稀人ハンターを名乗り、珍しい人やモノゴトを追い求めて生きている僕にとって、この衝動を抑えるのは難しい。今年の夏も、幻の存在、世界一の味と呼ばれる羊肉の生産者に会いに片道10時間かけて北海道の焼尻島に行った。それに比べれば、いわきはご近所さん。しかも、報道を見たのは夏だったから、キノコのシーズンである秋も間近。もはや、行かない理由を見つけるほうが難しい。

世界一の味と呼ばれる羊肉の生産者に会いに行った際の記事はこちら

 ちなみに僕はまごうことなき庶民なので、トリュフを食べたのは過去に一、二度あるかないか、トリュフ風味のなにかだった可能性すらある、という程度。トリュフを食べたいというよりは、宝探しの感覚だ。

 僕は発見者のひとり、いわきキノコ同好会の会長、冨田武子さんに連絡を取った。いわき市の元教員で、現在は洋画家でもある冨田さんは気さくな方で、「トリュフを採りたい」という僕のストレート過ぎるリクエストにも「案内しましょう」とおおらかに応じてくれた。そうして僕は10月15日、いわきに向かった。僕はまったく知らなかったのだけど、奇しくもその日は日本特用林産振興会によって制定された「キノコの日」だった。

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未知の細道 No.124

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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