未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
122

茨城県城里町桂地区

関東の嵐山、といわれる茨城県城里町。そこは「桂雛」という雛人形の産地でもある。この町にたった一軒しかない雛人形店には、美しい雛人形を求めて、遠くから様々な人が訪れるという。伝統工芸としての歴史の中で、雛人形のあらたな道を模索する人形作家のアトリエを訪ねた。

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.122 |25 September 2018
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
岡山県美咲町

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#1「関東の嵐山」のお雛様

ここが「関東の嵐山」だ

 雛人形——女の子の健やかな成長を祈る雛祭りの節句に飾られる人形だ。雛祭りの起源は「雛あそび」として古くは平安時代からあったとされ、男雛と女雛からなる雛人形は「お内裏様」ともいわれるように、宮中の装束を模して作られている。この雛人形の産地は各地にあるが、「京雛」「駿河雛」などと、産地を冠して呼ばれることも多い。

 茨城県城里町桂地区は「関東の嵐山」と呼ばれ、山と川が織り成す里山の風景が美しい町である。ここには古くから都にまつわる伝説がいくつか残っている。その昔、この地に孝謙天皇の別荘があったという伝説や、「桂」という旧村名の響き、嵐山に例えられる「御前山」と、そのそばを流れる「皇都川」という川の名からも、もしかしたら都とのつながりが何かあったのかもしれない……という歴史ロマンを感じられる場所なのだ。

 そしてこの城里町は「桂雛」といわれる雛人形の産地のひとつでもある。ただし、雛人形を生産しているのは城里町桂地区にある「小佐畑人形店」という一軒の人形店のみ。今日はその「桂雛」に会いに、友人とともに関東の嵐山へと向かっているのだ。実は私は日本人形、特に雛人形については、これまでほとんど知識も、もっと言えば興味もなかった。しかしこの夏、ひょんなことから、美しいお雛様たちに出会ってしまったのである。

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未知の細道 No.122

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。