茨城県城里町桂地区
関東の嵐山、といわれる茨城県城里町。そこは「桂雛」という雛人形の産地でもある。この町にたった一軒しかない雛人形店には、美しい雛人形を求めて、遠くから様々な人が訪れるという。伝統工芸としての歴史の中で、雛人形のあらたな道を模索する人形作家のアトリエを訪ねた。
最寄りのICから【E6】常磐道「那珂IC」を下車
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雛人形——女の子の健やかな成長を祈る雛祭りの節句に飾られる人形だ。雛祭りの起源は「雛あそび」として古くは平安時代からあったとされ、男雛と女雛からなる雛人形は「お内裏様」ともいわれるように、宮中の装束を模して作られている。この雛人形の産地は各地にあるが、「京雛」「駿河雛」などと、産地を冠して呼ばれることも多い。
茨城県城里町桂地区は「関東の嵐山」と呼ばれ、山と川が織り成す里山の風景が美しい町である。ここには古くから都にまつわる伝説がいくつか残っている。その昔、この地に孝謙天皇の別荘があったという伝説や、「桂」という旧村名の響き、嵐山に例えられる「御前山」と、そのそばを流れる「皇都川」という川の名からも、もしかしたら都とのつながりが何かあったのかもしれない……という歴史ロマンを感じられる場所なのだ。
そしてこの城里町は「桂雛」といわれる雛人形の産地のひとつでもある。ただし、雛人形を生産しているのは城里町桂地区にある「小佐畑人形店」という一軒の人形店のみ。今日はその「桂雛」に会いに、友人とともに関東の嵐山へと向かっているのだ。実は私は日本人形、特に雛人形については、これまでほとんど知識も、もっと言えば興味もなかった。しかしこの夏、ひょんなことから、美しいお雛様たちに出会ってしまったのである。
松本美枝子