「レコード部」とは、何をする部活なんだろう? この日も活動の準備をしていた「部長」、橋本真吾さんにお話を聞いてみました。
「レコード部という名前ですが、CDでもデジタル音楽でもいいんです。好きな曲を持ち寄って、聴き合って、お互いの知識をシェアしたりしています。BUKATSUDOでイベントが行われるときは、その音楽を任せてもらうこともありますね」
新しい音楽や、同じ価値観を持つ仲間と出会える部活を目指しています、と話す橋本さん。どれだけ珍しいレコードを所有しているか、というような極端にマニアックな人は来ないという。むしろ、BUKATSUDOという場所に引かれて偶然やって来たという人と話しているうちに、昔はよくCDを買い集めていたとか、ライブハウスに通い詰めていたとか、音楽好きだった頃を思い出して入部するような人が多い。
「知らない人どうしでも、同じ音楽が好きだったら、挨拶からはじまるようなコミュニケーションを積み上げていかなくても一気にわかり合えたりするんですよ。あのミュージシャンの、あの曲が好きって話しているだけで、何時間も話し合ったかのような間柄になれる。そんな“言語”の代わりになれるところが音楽にはあるんです」
橋本さんは、高校生の頃から渋谷のクラブやライブハウスでDJをしていた生粋の音楽好き。音楽の専門学校に通いながら音響技術のエンジニアとして働き、HMVのバイヤーを経て、レコード会社に引き抜かれる。それから5年、デザインから広報まで音楽のすべてに携わり、好きなことを好きなだけやれる環境だったという。しかし、転機は突然訪れる。
「家族が体調を崩してしまって。これまでのように会社に3泊も4泊もする働き方ができなくなったんです。それで音楽業界から離れて地元・横浜に戻り、“ふつうの会社員”になるという道を選びました」
そんなとき、BUKATSUDOに出会い、レコード部を立ち上げることになった。仕事で音楽に関われなければ、仕事じゃない所で音楽に関わればいい。今は自分を表現する場としてBUKATSUDOが役立っているという。
「自分だけの時間と、人とつながる時間。人生には、ふたつの時間が必要だと思うんです。自分ひとりで溜め込んだ物事をシェアできるのが部活のいいところで、ぼくは部屋に溜め込んだレコードをシェアして聴いてもらえることで、嬉しかったり、晴れやかになったりするんです」
レコード部の活動は月に3、4回。
毎月第4水曜日の夜はレコード部によるイベント「水曜BAR」も開かれている。入部希望者も、とりあえず見学したい方も、水曜BARがある日にBUKATSUDOにお越しいただけると確実です、とのことだ。
ライター 志賀章人(しがあきひと)