秋晴れのシルバーウィーク。私は再び古河へとやってきた。加藤さんのワークショップ「まちのみかた」に参加するためである。今日の参加者は7名。古河商工会議所職員の関根さん夫妻、そして関根さんが住むビルの2階で探偵事務所をやっている顔出しOKの気さくな探偵、長谷川さん、通称・探偵さん(そのまま!)、それから私と友達でデザイナーのさおりちゃん、加藤さんの建築事務所の敏腕所員であり一級建築士の羽部律子さん、そして加藤さんである。
昔ながらの目抜き通りをまず歩く。古河市街を初めて歩く私とさおりちゃんは少し興奮していた。「観察する」という目的を持ってまちなかを歩きだすと、普段は目に留まらないふつうのものが、いかに輝いて見えてくることか! 建物ばかりではない。おもしろい看板や、古びた注意書き、道路にはみ出んばかりの植栽、洒落た造りのお店、用途が全くわからない道端の大きな石……、そんなものを見つけては、「あ、ここにこんなものがあるよ!」とシャッターを切っていく。見慣れた自分の町も、こんな風に歩いたら全く違って見えるのかもしれないなあ、ふと、そんなことを思いながら。
目抜き通りを抜けると、今度は古い蔵やそれをリノベーションした店舗など、趣のある建物がポツポツと目に入ってくる。きっと戦前からある建物に違いない。ちなみに私の住む水戸は残念ながら、そういった古い建築物はほとんど残っていない。太平洋戦争末期に大規模な空襲を受けているからだ。そんな話をすると加藤さんは頷いた。「そう、古河は空襲を受けてないからね。もう少し向こうに行くと旧武家屋敷の土塀も残っているよ」と教えてくれた。
古河城跡のお堀や現存する武家屋敷を使って作られた鷹見泉石記念館などが続く景観地区を抜けると、今度は美しい石畳が続く地区になる。古河は歴史の古い町で、芸術家、作家も多く輩出している。街には古い建築が今も多く残っており、歴史や文学が好きな人たちが散策する町として、密かな人気があるのだ。
さて、石畳の歩道や小学校の柵などをよく観察すると、雪の結晶のようなモチーフが使われているのに気づいた私とさおりちゃん。これは一体なんだろう?
江戸時代の古河藩は学問や芸術が盛んだった。特に藩主・土井利位が日本で初めて雪の結晶を観察、研究していたことは、現在の古河の観光資源になっていて、町の至るところに雪の結晶モチーフがデザインとして組み込まれているのであった。それを私たちに教えてくれたのは商工会議所の関根さんだ。
松本美枝子