未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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地域を超えて水を繋ぐ 「流域外分水」の巨大インフラ施設に潜入!

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.273 |27 January 2025
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#8トンネル掘削の先端へ

またあの怖すぎるエレベーターに乗り、玉里立坑の地下へと到着した。先ほど見学した茨城立坑と大きく違うのは、ここは今まさにトンネル掘削工事が進められている場所であり、立坑の中へさまざまな大型部品をおろすための機械が設置されているところだ。

「南」と書かれているのは、つまり霞ヶ浦、トンネル工事が終わった第6工区。私たちは、反対側の「北」、つまり今、遠く那珂川に向かってまさに掘り進められている坑口にいざ潜入だ!

  • 地下へと降ろされたセグメント

トンネルの内部にはなんとレールが設置され、小さな車両が行き来し、人と部品を運搬している。またトンネル内にはオフィス台車や、トイレ台車といった、作業に必要な部屋も確保されている。驚くことの連続だ!

  • 時折やってくる小さな車両
  • トンネル内のオフィスやトイレの横を通って歩く!

24時間体制で掘削しているこのトンネルの最先端にあるシールドマシンは、毎日なんと16メートルほど土砂を掘り進めていくのだという。私たちは坑口からトンネルの内部、約200メートル先まで進んで見学することができた。ちなみに私は高所恐怖症でもあるが、閉所恐怖症で、暗所恐怖症でもある。そんな自分が地下40メートルの工事現場に、トンネルの深奥部へと200メートルも進んで立っているのだ、と考えると、興奮と怖さで、頭がくらくらしそうだった。

  • エレベーターに乗って地上へと戻る!

これで、すべての見学が終わった。実は、取材の日はクリスマスイブ。「人生で最高のクリスマスイブだったなあ……」と思いながら、最後のエレベーターに乗った。カゴのようなエレベーターは、相変わらず陽気な音楽を奏でながら、ゴトゴトと上がっていく。金網のすきまから見える地底の景色は、ぐんぐん遠ざかっていく。

こんな大迫力の工事現場を、この目で見られることが、この先、いったいあと何回あるだろうか。自然の力、水の力を生かすために、自然や地形を大きく変えていく巨大インフラ施設が、私たちの生活の場の、実はすぐ近くあるのだということを知った。忘れられない一日となった。

背中の文字とマイヘルメットがかっこいい! 宮下所長と五十嵐さんの後ろ姿。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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