さて那珂機場の外に出てみた。少し先には那珂川が見渡せる。
機場本体の隣には何もない大きな庭が広がっているように見えるのだが、実はこの地下には「沈砂池(ちんさち)」があるのだ。沈砂池とは聞きなれない言葉だが、川と機場の間にあり、樋管から取水した水の流れを緩やかにし、砂やゴミを沈め、取り除くのが役割だ。そしてこの沈砂池こそが、インフラマニア垂涎の場所なのだ。
階段を降りていくと、「壮麗」と言いたくなる空間が広がる。薄暗い水の中に光が差し、コンクリートの巨大な円柱が何本も並ぶ。まるで神殿のようだ。かすかな物音も「ワァァァーン……」とよく響き、ここはいったいどこだ? と思うほどの神秘的な空気が漂っている。
インフラ施設に詳しい人なら、インフラ観光では既に大人気の「首都圏外郭放水路」(埼玉県)に、とてもよく似ている施設だということに気づくだろう。だが、実はこちらの方が古いのだそうだ。
それにしても那珂川のほとりに、人知れずこんな場所があるとは......! 驚きの連続である。
ちなみに田畑さんが所長時代には、なんとこの沈砂池でプロジェクションマッピングを行ったそうだ。ここに映像を投影したら、きっとまた違う美しさが広がりそうだ……、と頭の中でイメージしてみる。
それもこれも地域の人たちに那珂機場、そして導水事業を理解してもらうために、現場へと足を運んでもらうためだった。それが今の霞ヶ浦導水での定期的なイベント開催に繋がっている。