那珂機場を出て、すぐ目の前にある那珂樋管へと移動する。一級河川・那珂川は栃木県、茨城県を流れる日本有数の清流として知られており、アユやサケが遡上する自然の恵が豊かな川だ。
霞ヶ浦導水事業が始まったと同時に、地域の漁業関係者からは反対の声があがったという。鮎の稚魚等が樋管に吸い込まれて生育が阻まれ、漁獲量が減ってしまうのではないかという懸念からだった。
「そこで那珂機場では鮎の稚魚等の生態を調査し、稚魚が取水口に吸い込まれないようにさまざまな工夫をしたのです」と宮下所長。稚鮎が泳げるよう、吸いこみ流速を平均毎秒30cm以下としたうえで、目幅約5mmのメッシュスクリーンを樋管に設置した。
さらに鮎の仔魚(幼生。稚魚の前段階)が那珂川上流から下流への流下が盛んな時期や時間帯を調査し、それにあたる10月から11月までの夜間には浄化のための取水を停止する方針だ。
このような取り組みの結果、OBの田畑さんが霞ヶ浦導水工事事務所長だった時に、漁業関係者とも和解。施設は全部で8門からなる取水施設だが、現在は残りの4門の設置を進めているという。
この那珂樋管の工事現場も見学可能だ。那珂川の間近に立つと、改めて那珂川の水の美しさが確認できる。この清流から取水した水を、水戸のまちなかに流れる桜川や、遠くはなれた霞ヶ浦まで送り、そこの水質を浄化させるのが、この導水事業の目的のひとつなのだ。