山形県山形市
近隣の大型スーパーに顧客が流れ、閉店をも覚悟した地域密着型スーパー「エンドー」を救ったのは、山形のソウルフード「げそ天」!行くたびに新しい発見があるという元気なご当地スーパーの正体を知りたくて、現地を訪れた。
最寄りのICから【E48】山形自動車道「山形北IC」を下車
最寄りのICから【E48】山形自動車道「山形北IC」を下車
JR羽前千歳駅前の通りは、閑散としていた。
店舗がほとんどない道路沿いは人影もまばらで、駐車場と住宅ばかり。西口を出て1分歩くと、目的地らしき建物が見えてきた。
まず面食らったのは、店頭に置かれた顔はめパネル。「エンドーのゲソ天」と書かれたパネルの顔はめ場所には、「ゲソ男」と「筋子」という謎の名前が書いてある。入口の反対側にはのぼり旗。「天」の文字のイカの足が、風に吹かれてくにゃくにゃと舞っている。のぼりの下に書かれた「GOOD DESIGN AWARD 2023」のロゴが、店舗に入ろうとする人に「なんだか凄そう」と感じさせる。
グレーの塗装に黒とも深緑ともつかない雨染みが残る壁に浮かび上がる「ENDO」の文字を見ると、ここが目的地のスーパーであることは間違いがない。ただ、観光地のような顔はめパネルと、漂白剤で洗ったような輝く白地の旗に浮かんでは泳ぐ「げそ天」の赤い文字が、年季を感じさせる入口の外観に似つかわしくないような気がした。
地方都市に根強く残る小規模経営のスーパー、と言ってしまえばそれまでだが、「エンドー」は「よくあるスーパー」ではない。
「エンドー」がある長町を含む山形市千歳地区の人口総数は2020年の調査によると8132人。対して「エンドー」のInstagramのフォロワー数は、2024年10月末時点でなんと1万人を超えているのだ。住人の数よりフォロワー数が多いなんて、普通の地域スーパーであるはずがない。
「エンドー」人気を牽引しているのは、のぼり旗にもなっている「げそ天」。
げそとはイカの足のこと。げそに衣をつけて揚げた天ぷらであるげそ天は、山形市をはじめとした山形県村山地方では、蕎麦やラーメンのサイドメニューとしてポピュラーな存在だ。山形のソウルフードといわれつつも「サイドメニュー」であったげそ天を、訳あってお店の「センター」に据えた「エンドー」。
いったい、この家族経営の地域スーパーでどんなことが起こったのか。「エンドーワールド」に足を踏み入れてみよう。