未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
263

まちの外国人観光客数が50倍に!? 日英ファミリーが立ち上げた海辺の宿

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.263 |26 August 2024
この記事をはじめから読む

#2ファッションモデルとカリスマギャル店長

クリストファー・ウッドさんと麻未さん

美しい自然で知られるイギリスのヨークシャー地方で育ったクリスさんが、初めて日本にきたのは1997年、14才の時だ。貿易商で日本に来ることが多かった父や母と一緒に、車で日本各地を旅をしたという。「父が日本で車の販売をしていた関係で、パジェロ・ミニ(三菱自動車が販売していたSUV車)で全国を旅したんだよ。もしかしたら、その経験が今の事業のインスピレーションになっているかもね」とクリスさん。

日本がすっかり好きになったクリスさんは、17歳で再び一人で日本へ。北海道、青森、滋賀、広島など、こんどは全国を一人旅を続けた。「青森ではねぶたも見たし、滋賀の琵琶湖も行って、ほんとうにたくさんの経験をしたよ」

やがて日本でモデルの仕事が来るようになり、大学を卒業するまで、イギリスと日本を行ったり来たりしながら、「POPEYE」「HUGE」といった人気雑誌や「ビルケンシュトック」「リーガル」などのブランドのモデルを務めるようになったという。

すると「パパ、あれを見せてあげれば?」と蕾羅くんが、一冊のアルバムを持ってきてくれた。ページをめくると、シャープですてきな男性モデルが有名ブランドの靴や服を着こなし、東京の街に佇んでいる写真が何枚もあった。なんと若き日のクリスさんだった!

ファッションモデルとして活躍していたクリスさん

一方の麻未さんは北海道石狩の出身。東京へ出てアパレルのスタッフとして働いていた。 「マルキュー(渋谷のファッションビル、109のこと)」のなかにある「リズリサ」というブランドの店長や、読者モデルをやらせてもらっていたんですよ」と麻未さん。

こちらも当時の雑誌の切り抜きを見せてもらった。眩いばかりの「ギャル」麻未さんの、おしゃれなコーディネートや私物が雑誌の中で公開されていた。いわゆるギャルのカリスマ店長だったんですね、と私がいうと、麻未さんはにっこりした。きっと15年前の渋谷ですごい人気者だったのだろうな、と簡単に想像ができるくらい、今も麻未さんはとびきりおしゃれな人なのだ。

読者モデルとしても活躍していた麻未さん

同じファッション業界で働いていた二人は2008年に出会い、一年ほどで結婚という道を選んだ。「それまで外国人と付き合ったことはなかったんですよね、でもクリスはとてもジェントルマンで、こんなに自分を大事にしてくれる人にはもう出会えないだろう、と思ったんです」と麻未さんはいった。長男の蕾羅くんと、この日は広島へ旅に出ていて不在だった次男の瑠知琉(るちる)くん、長女の愛梨杏ちゃんという三人の子どもたちにも恵まれた。

それまでモデルの仕事一本だったが、家族のために結婚してからさまざまな仕事をするようになったクリスさん。モデルだけでなくドライバーや英語教師もやった。やがて英会話スクールや英語に特化した幼稚園経営などの事業を手がけるようになっていった。

このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。