開店直前に着いたので、ちょうど酒井さんは準備をしているところ。アウトドア用の椅子をたくさん抱えて出てきて、ポーチに置いておく。「好きなところで本を読んでもらいたくて」という店の前は、いい感じの木陰になっていて、たしかに絶好の読書の場所に違いない。読み聞かせの会、音楽会などのイベントも駐車場と店の間の広場で行っているそうだ。
自然に抱かれて読書ができることは、もくめ書店の一番の売りだと酒井さんは言う。
もくめ書店に入ってみる。建物は、本屋を始めるにあたり購入した家の一階部分。広いスペースではないけれど、ぐるりと見渡せる一部屋のなかに、ぎゅぎゅっと酒井さんの好きな本、おすすめしたい本の新刊と古書が入り混じり、雑貨などの小物までが並んでいて「本に浸れる世界」が完成していた。
奥には子どもがすっぽりと入って本を読める、秘密基地のようなスペース。喫茶やランチが食べられるカウンターもあって、本を売る店だけど、本をじっくり読む時間を提供できるように心を込めて考えられた店でもあることが伝わってくる。
選書も、カフェの運営もすべて酒井さんがひとりで行っている場。人柄がまるっと伝わる空間は、「本屋」と「本好きの友達の家」の中間くらいの心地よさ。本を買いに来る人に限らず、詩や絵の創作にやって来る人、おしゃべりしにくる人、さまざまだ。