酒井さんにとってフィットする環境にあるもくめ書店。とはいえ、人里離れた場所にあるから、失礼ながらお客さんが来ない日もあるのでは? と恐々聞いてみたら、平日でも5〜6人ほど、村にたくさんのキャンプ客が来る土日などは30人程度の来客があるときもあるそうだ。
予想より多いです、と素直に告げると、「私もそう思います」と酒井さん。開店して2年、リアルな人との出会いにも恵まれて、ご近所の常連さんから遠方からわざわざ訪ねて来る人たちまで、多様な人たちに支えられているという。
とはいえ、経営は一筋縄じゃいかないし、一人の手ではやりきれないこともたくさんある。酒井さんの夫はキャンプグッズの貸し出しなどをする会社をここで起業して奮闘中。ほかの収入も組み合わせながら、本屋は“とんとん”でなんとか続けている厳しい現実もある。
「でも、続けることが何よりも大事だと思っています。尊敬する書店の先輩にも『5年続けてやっと見えてくる感じだよ』って言われたことがあって。本当にそうだろうなって。楽しいイベントを催して集客したり、地元の作家さんの本を扱ったり、一人出版社のような小さなところを応援したり……小さな本屋なりにできることも模索しながら、まずは5年を目標に続けていきたいです」