未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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岩手から全国にはばたく毛織物 大正から続く伝統の「ホームスパン」

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.255 |25 April 2024
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#9青天の霹靂だった「移転」

2022年、運営を担うようになり8年目。創業60周年を迎えたタイミングで、工房の移転を余儀なくされた。理由は、築80年を超える建物の老朽化。

以前使っていた工房の外観。築80年を超えていた。(写真提供:みちのくあかね会)

もともと盛岡市から借りていた物件だった。市の担当者が工房に訪れ、移転の話を切り出された時のことを、渡辺さんは「言葉がでなかった」と振り返る。

「引っ越しの資金もないし、これだけの資材や機械をどう運ぶかも、まったくわからなくて。建て替えや修繕で済ませてもらえないか、他の場所を紹介してもらえないかと交渉しましたがダメでした。なんとかしなきゃと、テレビ番組『大改造‼︎劇的ビフォーアフター』に手紙を書いたりもしましたね(笑)。残念ながら返事は来なかったですけど」

「せめて猶予をください」とお願いし、移転先を探し始めた。条件は働き手が通える距離で、機械を搬入できる広さがある場所。

そして見つけたのが、盛岡駅から車で15分ほどの今の工房。以前はレストランだった場所だ。100坪から60坪にサイズダウンしたものの、観光名所「盛岡町家」から徒歩5分で、観光客も流れてきやすい。

心配のタネだった引っ越し資金は、クラウドファンディングで調達した。多くの人たちからの応援で360万円が集まった。

みちのくあかね会から徒歩5分ほどの場所にある「盛岡町家」の一角
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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