2022年、運営を担うようになり8年目。創業60周年を迎えたタイミングで、工房の移転を余儀なくされた。理由は、築80年を超える建物の老朽化。
もともと盛岡市から借りていた物件だった。市の担当者が工房に訪れ、移転の話を切り出された時のことを、渡辺さんは「言葉がでなかった」と振り返る。
「引っ越しの資金もないし、これだけの資材や機械をどう運ぶかも、まったくわからなくて。建て替えや修繕で済ませてもらえないか、他の場所を紹介してもらえないかと交渉しましたがダメでした。なんとかしなきゃと、テレビ番組『大改造‼︎劇的ビフォーアフター』に手紙を書いたりもしましたね(笑)。残念ながら返事は来なかったですけど」
「せめて猶予をください」とお願いし、移転先を探し始めた。条件は働き手が通える距離で、機械を搬入できる広さがある場所。
そして見つけたのが、盛岡駅から車で15分ほどの今の工房。以前はレストランだった場所だ。100坪から60坪にサイズダウンしたものの、観光名所「盛岡町家」から徒歩5分で、観光客も流れてきやすい。
心配のタネだった引っ越し資金は、クラウドファンディングで調達した。多くの人たちからの応援で360万円が集まった。