次はいよいよ、糸を紡ぐ作業。
カーディングした羊毛から繊維を引っ張り出し、機械で回転をかけてねじり合わせながら1本の糸にしていく。これを「撚り(より)をかける」という。
わたあめのようなふわふわの状態の羊毛を「あっ」という間に1本の糸に変え、高速で糸車に巻きつけていく姿に思わず見入った。ちぎれてしまわないのだろうか……と心配になるのだが、職人の指先を通ると均等な太さの糸になっていく。
しかも、作るものによって糸の太さや重さに指定があるというから驚く。つまり毎回、指の感覚で細くしたり太くしたりと調節しているということだ。いったいどれほど練習すれば、この技が身につくのか。
「そうですねぇ、もちろん個人差はあるけれど半年くらいはかかるかなぁ。やっぱり最初は糸が太くなったり細くなったり、ボコボコになったりします。整えようとして時間をかけると、撚りがかかりすぎて糸が固くなっちゃうし。指の押さえ方や引き具合で太さを調節する、かつ指定した重さの糸に紡ぐのは高度な技術です。みなさんが指定通りの軽い糸に紡いでくれるから、製品の軽さを実現できるんです」