2月9日、開場時間の17時30分を迎えると、細雪が舞い散る会場には、全国から集った物好き……いや、焼き肉好きでごった返していた。その数、なんと約2000人! アナウンスによると、沖縄から来た人もいたそうだ。その旅費で、地元で焼き肉を食べたら何人前になるのかなんて、無粋な想像をする人は北見まで来ない。
会場には700個の七輪が並ぶ。見たことのない景色だ。開場時の気温は、マイナス6度。ありったけの防寒具を着込んでモコモコになった人たちはみな、顔を上気させているように見えた。祭りの熱気で火照っているのか、冷気で頬が赤くなっているのか見分けがつかない。
受け付けでお肉を受け取った僕らはまず、出店を見て周った。「北見おでんとまぐろ」「エゾシカジンギスカン」「厳寒のスナック」などなど個性的な看板が並ぶ。こういうローカル感も、たまらない。あるテントでは、北海道の西部に位置する北竜町の人たちが、炊きたての「北竜町産ひまわりライス」を振る舞っていた。しかも無料!
焼き肉はライスと一緒に食べる派の僕は、迷わず大盛りを注文。ほかの3人も湯気が立ち昇るほっかほっかのライスを受け取り、指定の七輪のもとへ向かった。炭には火がついていて、あとは肉を焼くだけ。これを至れり尽くせりといわず、なんと言おう。ベンチの上に薄く積もった雪を払って腰かけ、休む間もなく牛サガリと豚ホルモンを網に横たえる。いざ!
……無音。
ジューッという焼き肉店でおなじみの音が、まるで聞こえない。それでも煙はじりじりと立ち昇っているから、焼けてはいるのだろう。さすがマイナス6度のアウトドア焼き肉、勝手が違う。
肉が焼けるまでに、数分。各テーブルに用意されているタレは、キンキンに冷えている。でも凍ってはいないようだ。そこに焼きたての肉をサッとつけて、口のなかに放り込んだ……。