未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「北見厳寒の焼き肉まつり」はサムくない。 氷と雪と焼き肉と。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.251 |26 February 2024
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#2当日の気温はマイナス6度

2000人が集まった会場の様子。

2月9日、開場時間の17時30分を迎えると、細雪が舞い散る会場には、全国から集った物好き……いや、焼き肉好きでごった返していた。その数、なんと約2000人! アナウンスによると、沖縄から来た人もいたそうだ。その旅費で、地元で焼き肉を食べたら何人前になるのかなんて、無粋な想像をする人は北見まで来ない。

会場には700個の七輪が並ぶ。見たことのない景色だ。開場時の気温は、マイナス6度。ありったけの防寒具を着込んでモコモコになった人たちはみな、顔を上気させているように見えた。祭りの熱気で火照っているのか、冷気で頬が赤くなっているのか見分けがつかない。

  • 北見に関係する出店も充実していた。(撮影:マエノメリ史織)
  • 初めて目にした「エゾシカジンギスカン」。

受け付けでお肉を受け取った僕らはまず、出店を見て周った。「北見おでんとまぐろ」「エゾシカジンギスカン」「厳寒のスナック」などなど個性的な看板が並ぶ。こういうローカル感も、たまらない。あるテントでは、北海道の西部に位置する北竜町の人たちが、炊きたての「北竜町産ひまわりライス」を振る舞っていた。しかも無料!

甘みがあっておいしい「北竜町産ひまわりライス」。

焼き肉はライスと一緒に食べる派の僕は、迷わず大盛りを注文。ほかの3人も湯気が立ち昇るほっかほっかのライスを受け取り、指定の七輪のもとへ向かった。炭には火がついていて、あとは肉を焼くだけ。これを至れり尽くせりといわず、なんと言おう。ベンチの上に薄く積もった雪を払って腰かけ、休む間もなく牛サガリと豚ホルモンを網に横たえる。いざ!

……無音。

うんともすんとも言わない肉たち。

ジューッという焼き肉店でおなじみの音が、まるで聞こえない。それでも煙はじりじりと立ち昇っているから、焼けてはいるのだろう。さすがマイナス6度のアウトドア焼き肉、勝手が違う。
肉が焼けるまでに、数分。各テーブルに用意されているタレは、キンキンに冷えている。でも凍ってはいないようだ。そこに焼きたての肉をサッとつけて、口のなかに放り込んだ……。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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