――表現がおかしいけれど、「北見厳寒の焼き肉まつり」は、予想通り、想像を超えてきた。例えば、焼きたての肉は凍る寸前のタレで瞬時に冷やされて、熱すぎず、冷たすぎない適温に! 猫舌の僕も待ち時間なく、パクパクと食べられる。
そして、特製生ダレとのマリアージュで牛も豚もうまい! 白米はあっという間に冷蔵庫で保存していた余りご飯のような冷たさになったけど、そんなのお構いなしでモリモリ食べられる。同行の3人も肉とご飯を食べることに夢中になっていた。
そうこうしている間に、パックのなかの肉はどんどん凍っていく。箸ではがせなくなり、仲間のひとりが「このままいっちゃえ!」と塊のまま網に載せる。ワイルドな見た目だ。
途中で炭の勢いが弱まり、ぜんぜん肉が焼けなくなった。肉の脂が炭に落ちると、瞬間的に炎があがる。でも、またすぐに小さな火に戻ってしまう。メンバーが交代で七輪をパタパタと仰ぎ続けていたら、祭りのスタッフが炭を足してくれた。それでもなかなか、火勢が回復しない。
この祭りで、七輪は肉を焼くことに加えて、暖を取るという重責を担う。だからみんな、炭を煽ることに必死になる。もっとこい! カモン! あれこれ試行錯誤していたら、ようやく火に元気が出てきた。それだけで、きたきた! と仲間から歓声が沸く。
再び、肉を焼き始めたら、仲間のひとりが「見て!」と声をあげた。ウーロン茶が見事に凍っている! カップを横にしても微動だにしないウーロン茶に、みんなで「すごい!」と言いながらスマホのカメラを向ける。
あれ……? しばらくして気が付いた。ぜんぜん寒くない。もちろん、着ぐるみみたいになっている完全防備の効果もある。でも、まったくままならない「真冬の夜のアウトドア焼き肉」に翻弄されているうちに、むしろ汗ばむほどだ。
冷たいご飯。はがれない肉。燃えない七輪。凍結ウーロン茶。普通の焼き肉屋では決して目にすることのない出来事が、次々と起こる。その「ありえない!」光景が笑いを誘う。