非日常を味わうだけなら、今の時代、さまざまな選択肢がある。25回目を迎えてもわざわざ北見まで足を運ぶ人が絶えない理由のひとつは、「焼き肉」自体の魅力だろう。このお祭りでは、1回目から変わらず「北見式焼き肉」を貫いている。
「北見の焼き肉は、七輪の炭焼きです。肉は余計な味付けをせず、そのままの状態で焼いて、生ダレをつけて食べます。生ダレは、各店舗が趣向を凝らして作ります。このお祭りでも、坂口精肉店さんなど市内の焼き肉屋に協力してもらって、生ダレを提供してきました。北見では、牛さがりと豚ホルモンが定番メニューです」
「北見式焼き肉」の実力は、2次会で焼き肉屋を予約する人が多いという事実からもうかがえる。アウトドアでお祭りを楽しんだ参加者が焼き肉屋に移動して、暖かい場所でゆっくりと北見式焼き肉を堪能するのだ。
青年会議所のメンバーだった2014年(15回目)から手伝うようになった山本さんは、2020年に実行委員長に就任した。このお祭りに携わってかれこれ10年経つが、いまだに「なんでこんなにたくさんの人が来るのだろう」と不思議に思うそうだ。僕が乗ったタクシーの運転手さんも、「店で食べたほうがおいしいのに」と呆れていた。
いやいや、と僕は思う。マイナス20度にも達するという想像もつかない北見の厳寒と北見市民自慢の北見式焼き肉が掛け合わされると、凍えながら食べる魅惑の焼き肉というエンターテインメントになる。実際、僕が取材に行くと言ったら、あらゆる人から「肉は凍らないのか?」「タレは?」「そもそも焼けるの?」といろいろ聞かれた。もし僕が単に「北見に焼き肉を食べに行く」と言ったら、ふーんで終わりだろう。このお祭りは、それだけ気になる「なにか」を醸し出しているのだ。
もちろん、なにを聞かれても僕はなにひとつ答えられない。まずは、体験しなくては!