――ところで、「北見厳寒の焼き肉まつり」はどういう経緯で始まったのだろう? 実行委員長の山本英和さんに話を聞いて、北見の歴史とユニークなカルチャーを知ることができた。
隣町の美幌町出身の山本さんは、高校時代を北見で過ごし、別の町で大学を卒業した後、再び北見に戻って土木・建築を手掛ける父親の会社に入社。現在は後を継いで社長に就いており、2020年から「北見厳寒の焼き肉まつり」の実行委員長を務める。山本さんは、北見には「焼き肉文化」があるという。
「昔、国鉄北見駅の裏に屠畜(とちく)場があって、新鮮なお肉が安く手に入りました。それで焼き肉文化が広がったと言われています。その頃はホルモンを食べる文化がなく捨てていたそうですが、北見に住む朝鮮出身の方がホルモン屋台を始めたのがきっかけで、ホルモンも食べられるようになっていきました」
北見市の人口は約11万人で、市内にはおよそ70軒の焼き肉店が並ぶ。人口1万人あたりの焼肉店の軒数は北海道トップで、全国3位。北見が「焼き肉の町」と称される由縁だ。
「居酒屋と同じぐらい焼き肉屋があるんじゃないかな。北見では、みんなで飯に行くかっていう時に、焼き肉か居酒屋で選ぶんですよ。北海道といえばジンギスカンを思い浮かべる方もいますよね。北見では、ほかの地域みたいに鍋でジンギスカンを出す店は多分1軒ぐらい。焼き肉屋のメニューにジンギスカンがあって、網で焼きます」
なにー!? ジンギスカンは北海道民のソウルフードかと思いきや、北見で市民の心を掴んでいるのは焼き肉のようだ。山本さんから聞いた次の話には、度肝を抜かれた。
「北見には、外で焼き肉をする文化もあります。みんな七輪とかバーベキューセットを持っていて、夏になるとよく自宅の前で焼き肉をするんです。天気のいい日は、いろんなところから肉を焼く匂いがしますよ」
焼き肉屋さんがたくさんあるだけじゃない。北見では、外で焼き肉をする文化まであるのだ。