未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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漆の木を自ら育てる「木漆工芸作家」を訪ねる 使えば使うほど育つ、大子漆の器

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.247 |11 December 2023
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#4刃物店に出入りして木工を学ぶ

大学では漆について学べたものの、やりたかった木工の授業がない。そこでまた、辻さんは行動を起こす。

「墨田区にある大工道具を扱う店『井上刃物店』に入り浸って、店主や店にくる大工さんに話を聞きました。木材の切り方や道具の使い方を教えてもらいながら、独学で木工を学んだんです」

「なぜそのお店に通おうと思ったんですか?」と聞くと、辻さんの人柄が垣間見えるような答えが返ってきた。

「いくつか老舗の刃物店に買い物に行ったんです。その時にね、わざとチャラい格好で行くんですよ。すると、なかには格好で判断してまともに取り合ってくれない人がいる。そういう店には二度といきません。井上刃物店は、見た目で判断せずに、嫌な顔ひとつせず接してくれました。それからは井上刃物店にしか行ってないです」

大学院卒業後は、木工を本格的に学びたいと富山県の短期大学へ。研究生として1年間学んだのち、1991年、茨城県にある「美和村ふれあい工芸センター」で指導員として約5年勤務する。

「美和村は、スギやヒノキを産出するまちです。『地元の素材を使って工芸品をつくってほしい』と知り合いに呼ばれて、器を中心につくっていました」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。