未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
245

だれかの、じぶんの、居場所をつくる 「バー」という表現をめぐる

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.245 |10 November 2023
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#6常連さんとクラブ活動

土曜の7時過ぎ、小さなパブ「竹の湯別館」は10数名も入れば、もう満員だ。この日も、誰かが店を出ても、すぐにまた新しいお客さんがふらりと入り、ずっと満員状態が続いていた。大きなガラス戸の向こうから眺めていると、子どもを連れたお父さん、お母さんが店先の常連さんたちに声をかけていくときもある。地域の人たちからもこの店が愛されているのがよくわかるのだが、実はまだ開店してから1年も経ってない、というのだから驚いてしまう。

窓の向こうのご近所さんたちと言葉を交わす

お客さんたちに、この店のどんなところが好きで通っているのか、聞いてみると、おしゃれな二人組の女性がもちろん! と言った感じで、「実里さん!」と即答した。聞けばこの二人は、この店で知り合った友達なのだという。それぞれは一人で来る客が多くて、この店独特のコの字型カウンターで、橘さんを中心にぐるりと集う他のお客さんたちと喋るうちに、やがてみんな友達になっていくそうだ。「コの字カウンターは絶対にやりたいと思っていたので」と橘さんも続けていう。

またこの店はスポーツの「クラブ活動」が多いのも特徴的だ。まず橘さんがとてもアクティブであり、この日もハーフパンツ姿で「店を開ける前までクライミングをやってきた」とのこと。
クラブ活動のなかでも、以前からよくやっているのはランニングイベント。お客さんが集まり、みんなで走った後に、また改めて「竹の湯別館」に飲みにきてくれるのだという。

加えて最近は「『モルック』という北欧発祥のスポーツ(モルックと呼ばれる木の棒を投げ、ピンを倒して得点を競うスポーツ)を、みんなでやってるんですよ!」とお酒を飲みながら女性客たちがいう。反対側の席ではこの「モルッククラブ」の「監督」と呼ばれている男性が、これまた楽しそうにお酒を飲んでいた。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。