40歳を過ぎ、小嶋さんのもとには「地域の若い人たちになにか話して欲しい」という依頼が増えたという。そういう機会に小嶋さんが伝えようとしているのは、米沢や、米沢のある置賜(おきたま)地域のポテンシャルだ。
「高校生までは、ここにはなにもないと思っていました。でも、華やかな消費文化を得ようと思ったら確かにここは物足りないけれど、生産地としては可能性に溢れる場所だということを、お酒という仕事を通して感じています。水であったり自然であったり農業基盤であったり、再生エネルギーにしてもそうですよね。近隣の高畠には有機農業にしっかり取り組んでいる生産者がたくさんいますし、手前味噌だけどうちのお酒も20か国に輸出されている。生み出す場所としてはここは素晴らしい土地なんです」
地域の子どもたちには、ここにあるものがちゃんと見えるようになってほしいと小嶋さんは願っている。
最後に、小嶋総本店の未来について聞いてみた。
「ここで作って海外に売るという形が子どもの時代にも通用するのかは正直わかりません。ただ、我々はここでやってきたっていう歴史が大きな特徴でもあるので、極力ここ米沢から動かないで済めばいい、と思っています」
400年以上受け継がれてきた暖簾を守り、米沢の自然に寄り添った酒造りをしていくために、小嶋さんの挑戦はこれからも続いていく。